【深化する関西の建設ICT⑪】メガソフト 他業種に広がる空間体感の強み | 建設通信新聞Digital

5月7日 火曜日

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【深化する関西の建設ICT⑪】メガソフト 他業種に広がる空間体感の強み

 「施主は自分が住む空間、自分が働く空間を見たがっている」と語るのはメガソフト(大阪市)の井町良明社長だ。1996年に『3Dマイホームデザイナー』を販売して以来、住宅・商業、オフィス、医療、業務厨房、飲食店、建設、物流倉庫などの分野に3Dシリーズを積極的にリリース、いまや商品数は20を超える。手軽に3次元空間を体感できることが強み。2016年に販売したVRソリューションとの連携効果で、活躍の場が広がっている。

井町社長


 家具メーカーのアカセ木工(岡山県里圧町)は『3Dインテリアデザイナー』を空間提案ツールとして活用し、営業面での成果を実感しているユーザーの1つだ。販売する家具類は多岐に渡り、壁面収納などもある。VRソリューションと組み合わせた空間売りを積極展開してきた大阪店は客単価が向上し、売り上げで前年比300%を実現した。サイズを体験できるVR効果が売り上げを後押しした。

 オフィス家具・文具・事務用品メーカーのプラス(東京都港区)では流通部門を担うジョインテックスカンパニーの営業担当に『3Dオフィスデザイナー』を全面導入し、全国の地域販売店にも活用を促進している。少子高齢化を背景に文具事務用品の消費人口が将来的に落ち込む懸念があり、空間提案での受注額の拡大が狙いだ。ことし2月には広島にVRソリューションを導入した次世代型ショールームも立ち上げた。

 両社の取り組みに見られるのは「空間提案をその場で提示できるスピード感」と、メガソフト広報担当の田辺和子さんは説明する。これまでの営業スタイルでは会社に持ち帰り、後日提案していた。アカセ木工の「空間提案によって購入の決定率が上がった」、プラスの「提案スピードの向上で商機が拡大した」との思いは、3Dシリーズを導入するユーザーの共通する声でもある。

 これは住宅やオフィス分野だけにとどまらない。医療分野でも高い評価を得ている。医療機器ベンダーのアイティーアイ(長崎市)は病院などへの機器導入提案にメガソフトの3DソフトとVRソリューションをフル活用する。特に強みを持つ透析病棟では関連機器だけでなく、ベッドや家具まで空間一式で提案する。透析は4、5時間もの間、横になって治療するため、照明の当たり方など患者目線で細かく確認したいとのニーズがあり、空間をVRで体感できることが営業の力になっている。

3Dシリーズは住宅・商業、オフィス、医療、業務厨房、飲食店、建設、物流倉庫など多岐に渡る


 施設管理に活用する事例もある。東京海上日動ファシリティーズは『3Dオフィスデザイナー』をカスタマイズし、全管理物件のメーター管理業務にフル活用する。開発した「TKNF施設管理者」システムは図面に各種情報を追加し、ビル全体や室内の管理状況を把握するものとなり、注目されている維持管理段階のBIMに通じる試みでもあり、同社は「BIM(ビルディング・インフォメーション・マネジメント)としてさらにシステムを確立したい」と考えている。

プラスが広島に開設したVRを使う次世代ショールーム


 メガソフトの3Dシリーズが幅広い分野で受け入れられている背景には、同社が多くの時間と労力を費やしていることが根底にある。念入りな市場調査に加え、空間をより現実的に演出するために関連パーツの作成に力を入れるため、リリースまでに2年以上かける場合も少なくない。20年に入ってからは4月に『物流倉庫3D』、8月には『交通事故見取図メーカー』を相次ぎリリースした。田辺さんは「空間だけでは成立しない。ニーズを細かく分析し、それに見合った素材の提供が重要になる。ユーザーからの要望を受け、ソフトをカスタマイズするケースも少なくない」と説明する。

 VRソリューションとの連携で、各3Dシリーズの提案の幅が広がっていることも強みだ。HMD(ヘッドマウントディスプレイ)によって目の前に3次元空間を出現させるVRソリューションは、まさに3Dシリーズに付加価値を与える存在となっている。

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