【BIM未来図・大和ハウス工業⑥】進行する現場デジタル化 工事の自主検査に「PlanGrid」 | 建設通信新聞Digital

5月17日 金曜日

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【BIM未来図・大和ハウス工業⑥】進行する現場デジタル化 工事の自主検査に「PlanGrid」

 オートデスクがデジタルコンストラクション時代の到来を見据え、2018年に建設テクノロジー関連会社3社を相次いで買収した。そのうちの1つ、プロジェクト関係者間の情報共有や共同作業をリアルタイムに支援する『PlanGrid』は現場のペーパーレス化にフォーカスしたソリューションだ。既に海外では大手建設会社の標準ツールとして定着し、日本国内では先行して大和ハウス工業が本格導入を決めた。

大阪のビジネスホテル建設工事ではタブレット端末を使って自主検査を行った


 完全BIM化を出発点に事業全体のデジタルトランスフォーメーション(DX)への実現を目指す大和ハウス工業にとって、施工現場のデジタル化は避けては通れない。19年11月には技術本部施工担当の吉岡憲一執行役員をデジタルコンストラクションの旗振り役として任命し強化を図った。吉岡氏は「近年、建築主のニーズは広がり、仕事の中身も多様化している。その要求を施工側が受け止めてきたが、人だけの力では対応できないほど要求は多様化している。より合理的な枠組みに移行しなければいけない」と、デジタル化による現場の省力化を強く訴える。

 現場担当は施工作業に追われながら、その記録を事務所に戻ってから整理する日々。それぞれが工夫しながら作業をこなしているものの、現場の規模が大きければ図面類やチェックリストなど必要書類も増え、 作業上の手戻りも少なくない。 現場内で施工状況を確認しながらリアルタイムで記録できれば、後工程の業務を大幅に削減できる。

 PlanGridを初導入した大阪市内のビジネスホテル建設工事では、竣工前の自主検査に取り入れ、現場で検査しながら、その結果や現況画像を、タブレット端末を介して実際の図面データにリアルタイムに反映した。これまでは傷や汚れに対し、付箋を貼り、その結果を事務所に戻ってから報告していた。検査しながら帳票やレポート作成もでき、検査の履歴も詳細に残せる。検査プロセスでは従来に比べ4割の時間短縮が実現したという。

 九州で施工中の14階建て複合施設でも検査に導入するほか、首都圏でも介護施設やマンション、冷蔵倉庫などのプロジェクトに適用を決めた。関東工事部の石澤一晃統括部長は「20年度末までに10件程度で試行し、22年度の定着を目指す。全国の各拠点で任命されているデジタルコンストラクションリーダーが牽引役を担っていく」と先を見据えている。

 設計段階の完全BIM化は20年度にめどが立ち、これから施工段階へのBIM導入が本格化する。今秋からはデータ連携の基盤となるオートデスクのクラウドサービス『BIM360』を全面導入し、現場のデジタル化を支えるインフラ環境も整う。オートデスクACSカスタマーサクセス担当の山根知治氏は「現場のペーパーレス化を支えるのがPlanGridであり、BIM360と一緒になって一元化された情報にアクセスしてこそ、効果が最大限に発揮される」と説明する。

 動き出した施工現場のデジタル化について、吉岡氏は「生産性や施工品質の向上だけなく、技術の伝承にも有効であり、さらには安全点検や物件管理、調達にも効果を発揮できるだろう」と手応えを口にする。PlanGridの試行現場では同じ試みをせず、プロジェクトごとに新たなチャレンジをする方針だ。

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