【人とロボの役割分担探る】ロボットで安心安全な空間づくりを提案 日建設計シビルとZMP | 建設通信新聞Digital

4月30日 火曜日

公式ブログ

【人とロボの役割分担探る】ロボットで安心安全な空間づくりを提案 日建設計シビルとZMP

 日建設計シビルとロボットベンチャー企業のZMP(東京都文京区、谷口恒社長)は、地上・地下での空間計画・設計と生活圏で活躍するライフロボットの実績を組み合わせた快適で安心・安全な空間づくりに共同で取り組んでいる。その一環として11月19日に東京都新宿区の地下街「新宿サブナード」で、無人警備・消毒ロボット「PATORO(パトロ)」による消毒液散布の実証実験を実施した。両社は7月に名古屋市の地下街「エスカ」で同様の実験を夜間に実施しているが、人通りがある昼間の実験は初めて。実証の成果などを踏まえ、地方自治体やディベロッパーなどにロボットを活用した安心・安全な空間づくりを提案する。

約150mのコースを時速4km程度で自律走行する


 ZMPが開発したパトロは、人間が歩く程度の速度で走行する「低速自動運転三兄弟」の1つで、無人宅配ロボット「デリロ」、自動運転車いすロボット「ラクロ」とともに、人との共生を目指して開発された。

 自動運転による無人パトロールを本来の目的としているが、新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて消毒液散布機能を付加した。

 新宿での実証実験では、約150mのコースを時速4㎞程度で自律走行しながら、あらかじめ入力したコースなどのデータに基づき、出入り口のドアノブや床に消毒液を散布した。

あらかじめ入力したデータに基づき、ドアノブと床に消毒液を散布

上部に設置した消毒液散布器から霧状に液体を噴射する


 最大速度は時速6㎞で複数のカメラやレーザーセンサーを利用して周囲の通行人を検出し、自動で回避したり、障害物手前で安全に停止するほか、音声で注意喚起する機能もある。環境によって異なるが、1時間の充電で2-6時間稼働する。長さ80cm、幅65.4cm、高さ108.9cmで重さは約110㎏。12月から受注を始める。

 オプションで搭載できる消毒液散布機のタンク容量は3.8リットル。今回の実験では次亜塩素酸水を使ったが、二酸化塩素水も使用することができるという。

 新宿サブナードは新宿駅(JR、東京メトロ、西武鉄道)に直結した地下街で、日本有数の繁華街の中枢を担う商業施設。新型コロナ対策で東京都による営業短縮要請が解除され、来訪者の安心・安全な利用や今後のコロナ感染対策の一環として通路の一部で実証実験をすることにした。

 実験に立ち会った日建設計シビルエンジニアリング部門の大森高樹CM・防災部長は、「基本的に地下街は空調が中央管理室で管理されているので、安心・安全な空間となっている。人力での手間をロボットに代わってもらい、人とロボットの役割分担を試みることが今回の実験の目的でもある」とし、昼間は防犯、夜間は消毒にロボットを使うといった活用例を挙げた。

大森CM・防災部長


 ZMPとのコラボレーションについては、「基本的に国内で生産しており、さまざまな要望に応じてロボットを改良することができる。地下だけでなく地上でもロボットが働く今後を考えると、国内で対応できる会社であることが重要だと思っている」とし、安心・安全な空間づくりに向けたロボット活用に意欲をみせた。

 ZMPの龍健太郎ロボライフ事業部長は、「コロナ対策として消毒機能を付加した。これまでに内閣府の庁舎や竹中工務店のオフィスなどでも無人消毒のデモンストレーションをしている。まちづくりの防災・減災で活躍できるということで日建設計シビルから声をかけてもらい、いくつかの場所で実証実験している」とこれまでの経緯を説明し、両社のコラボレーションによる安心・安全なまちづくりや労働力不足解決などに向けたロボットの活躍に期待を込めた。

龍ロボライフ事業部長

建設通信新聞電子版購読をご希望の方はこちら