【海外進出も視野】若手社員中心にデータ連携検討 三栄建設が鉄骨生産合理化をめざす理由 | 建設通信新聞Digital

5月18日 土曜日

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【海外進出も視野】若手社員中心にデータ連携検討 三栄建設が鉄骨生産合理化をめざす理由

 鉄骨ファブリケーターの三栄建設(大阪市)が、構造BIMソフト『TeklaStructures』(テクラ)を軸に、大幅な生産合理化に乗り出している。弘田昌文常務鉄構事業部長は「3次元モデルデータを最大限に生かしたい」と、図面作成から鋼材発注、製作管理に至るまでの鉄骨製造作業をデータでつなぐ連携システムの構築を進めていることを明かす。受注の95%を占める元請企業の竹中工務店と連携し、作業状況をリアルタイムに共有するシステムも開発中だ。BIM対応を足がかりに、将来的には海外進出も視野に入れている。

鉄骨製作後の製品管理


 社を挙げてBIM導入を進める竹中工務店と足並みをそろえたいと、同社は7年前からテクラの導入に踏み切った。当時は思うように活用が進まず悩んでいたが、国内建築プロジェクトを通じて関係が深まった海外ファブリケーターから、韓国の作図会社を紹介されたことが転機になった。弘田常務は「BIMを効果的に使いこなす姿を目の当たりにし、とことんやってみよう」と決意した。

 鉄骨ファブリケーター業界ではBIM対応に乗り出す動きが高まりを見せているが、同社はテクラから出力した構造モデルデータを工程ごとに専用ソフトと連携させ、生産の全体最適化を図ろうとしている。製造管理の情報は元請企業へ、鋼材発注の情報は商社へ共有され、プロジェクト関係者をもつなぐ。これまでは構造モデルから2次元図面を出力する作図部分に力を注いできたが、全体最適の枠組みが軌道に乗れば、製造管理では設計変更への迅速な対応が可能になり、鋼材発注ではリアルタイムな調達に加え、トレーサビリティーも強化できる。

 弘田常務は「熟練技能者が不足する中で、BIMが生産性向上の支援システムとして機能し、利益確保の生命線である材料ロスを最小限に抑えられる」と期待をのぞかせる。ピーク時には同時並行で10プロジェクトもの鉄骨生産が進む。工場内では構造モデルデータから出力した作図情報をベースに作成した工程表を運用するほか、製品検査後は敷地10万5000㎡のストックヤードをより効果的に活用できるよう、製品ごとにバーコードを貼り、GPS(全地球測位システム)を使って部材管理する試みも導入した。竹中工務店と連携し、作業の出来高をリアルタイムに情報共有できるシステムも提案中だ。

 構造モデルデータの属性としてさまざまな情報を入れられる点がテクラの強みだけに、弘田常務は「自らの作業に合わせて情報を有効利用してこそ、最大限の効果を得ることができる」と考えている。現在は30ライセンスを保有しているが、生産合理化に合わせてライセンス数も拡充する。いずれは鉄骨部分に連携する外装や屋根などの情報も含めた統合モデルとして元請側に提供する考えもあり、社内では意匠系BIMソフトの活用も推し進めていく計画だ。

 社内では各部署から20代を中心とした若手社員十数人を選抜したデータ連携の検討チームを発足させ、各作業のシステムづくりを進めている。メンバーでもある工務部の島田大輝氏は「自動作図機能によって作図者の癖の反映もなくなり、ヒューマンエラーを排除できる」と説明、鉄構事業部の弘田梢真主任代理は「製作管理のシステムが整えばゼネコン施工担当者(元請け)の工程計画に連携した製作計画が立案できる」と強調する。

弘田常務(中央)とデータ連携チームのメンバー


 同社は社屋と工場の移転に伴う事業拡張で、組織規模が350人体制と3倍近くまで拡大した。大阪市内を中心に安定した受注を続ける同社だが、国内マーケットが低迷してくれば、内需だけでは成長が難しくなる。「このシステムはまだ最終形ではない。着実に進化させていく。BIMへの対応力強化が将来への準備として海外進出への道にもつながる」と弘田常務は考えている。同社の生産合理化はまだ動き出したばかりだ。

鉄骨製作後の製品管理

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