【伸展する関西の建設ICT⑦】「Tekla」軸に進む生産改革 三栄建設 | 建設通信新聞Digital

5月6日 月曜日

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【伸展する関西の建設ICT⑦】「Tekla」軸に進む生産改革 三栄建設

 

鉄骨ファブリケーターの三栄建設(大阪市)が推し進める生産改革が新たなステージに入った。構造BIMソフト『TeklaStructures』(Tekla)を軸に図面作成から鋼材発注、鉄骨製作管理に至るまでの作業を一括管理する流れを確立しつつあり、Teklaデータとリンクした3次元ハンドスキャナーによる製品検査にも取り組み始めた。鉄構構造事業部長の弘田昌文常務は「新たなピースを組みながら最適な枠組みを追求していく」と考えている。

オペレーター体制の拡充で完全内製化へ

8年前にTeklaを採用し、本格導入に踏み切ってから4年が経過した。「いまやTeklaなしに事業は成り立たない」ほど、業務ツールとして浸透してきた。導入効果を最大限に発揮するため、重要視している取り組みの1つが図面作成の完全内製化だ。現在30人のオペレーター体制を100人規模に拡充し、社内に設計センター機能を持たせることで「海外への外注をなくし、将来的には同業他社からも積極的に設計を受託したい」と強調する。

Teklaのライセンス数は現在37本に達し、使用状況は常にフル稼働の状態という。経理部門もTeklaデータから出荷管理を行い、製造管理の情報は元請企業、鋼材発注の情報は商社にリアルタイムで共有されている。これまでは構造モデルから2次元図面を出力する作図部分に注力してきたが、現在はTeklaデータを各作業工程の中で多角的に活用しようとしている。

◆ファブ同士のモデル共有も始動
3次元ハンドスキャナーによる製品検査も新たな試みだ。Teklaデータを計測機器が読み込み、スキャナーを部材に当てるだけで図面との誤差をモニターで確認できる。固定式の計測機器では場所も限定され、部位によっては測定できない課題があった。「この試みが軌道に乗れば、地組検査が必要なく、敷地の省スペース化も実現できる。複雑な形状部分にも対応することから新たな検査ツールとして積極的に活用したい」と期待している。

竹中工務店の工事ではファブ同士でモデル共有が進む

20年にリリースされたTeklaのモデル共有機能『Tekla Model Sharing』の活用も急速に進んでいる。同社受注の95%を占める竹中工務店の工事ではTeklaを使う鉄骨ファブリケーターが拡大しており、三栄建設が参加するプロジェクトでは現在3物件で、この機能を使ってファブリケーター同士のデータ共有が進行中だ。

クラウドを介してTeklaデータを共有し、複数人が同時に作業できることから社内での活用も活発化し始めているが、それ以上に実際のプロジェクトを通してファブリケーター各社がデータ連携する生産性向上の効果は大きい。一定規模以上の建築プロジェクトでは複数のファブリケーターが参加するケースが多いだけに実績を積みながら、「各社共通の運用ルールとして確立していきたい」と先を見据える。

建築プロジェクトのBIM導入が進展しつつある中で、受注範囲も広がってきた。竹中工務店が東京都内で施工するプロジェクトへの参加が決まった。三栄建設にとっては初の首都圏進出となる。Teklaの導入によってBIM対応力を高めてきたことが受注に結びついた。

Teklaデータとリンクした3次元ハンドスキャナーによる製品検査

同社の生産規模は現在3万2000t。Teklaを軸とした生産改革が実現し、効率化の取り組みがさらに成果を上げれば「将来的に4万t規模まで拡大できる」と考えている。その前提となるのが、オペレーター体制を100人規模にまで拡充する設計センター化の実現だ。

図面作成の完全内製化によって、製造に向けてデータを利活用する基盤は整う。例えば溶接するためのデータを入力し、それをもとに円滑に生産が進行する流れを確立できれば、大幅な省力化も実現できる。弘田常務は「Teklaというソフトは多機能で、奥が深く、さまざまな使い方ができる。改革の到達点はまだ先だが、一歩ずつ着実に進んでいる」と確信している。

 

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