【深化する関西の建設ICT⑫】竹島鉄工建設 設計から加工・製作まで3次元化 | 建設通信新聞Digital

5月4日 土曜日

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【深化する関西の建設ICT⑫】竹島鉄工建設 設計から加工・製作まで3次元化

 鉄骨ファブリケーターの竹島鉄工建設(和歌山県有田川町)が、設計から加工、製作までの工程に3次元モデルデータの活用を全面展開している。元請けである大林組の指導の下に製作途中のモデルチェックもデジタル承認を実施するなど、3次元の生産に舵を切った。竹島徹社長は「2021年からは生産や在庫の管理も含め、事業全体で一気通貫のデータ活用に乗り出す」と力を込める。

竹島社長


 同社が3次元設計に乗り出したのは10年前。複雑な部材接合を検証する手段として、構造BIMソフト『TeklaStructures』(Tekla)を導入したものの、当時はまだ納まり確認用の補助ツールにとどまっていた。将来的には設計から製造までの全工程を3次元化したいと、いくつかの構造系ソフトを検証し、「最終形まで100%モデリングできる」ことが決め手になり、17年からTeklaを社内の標準システムとして位置付けた。

 取引先の建設会社ではBIM導入が進み、現場から3次元データを提供されるケースが増加傾向にある。現在は半数程度の受注プロジェクトから3次元の提供を受けているが、従来のように2次元で提供された場合には、社内の設計グループがモデル化する体制をとり、現在は全物件を3次元化している。

取引先の建設会社とはモデル承認が前提


 提供される3次元データについても建設会社ごとに作り方が異なることから、モデリングのルールを確立し、後工程で円滑に活用できるようにモデルを調整している。現在20人の設計グループに、モデリング専門の協力会社を加えた29人体制で対応中。Teklaについては現時点で21ライセンスを取得し、図面専用のドラフターまで含めれば計26ライセンスを確保している。社内では設計だけでなく生産管理、現寸、積算の担当にもTeklaを使いこなす人材がいるという。

 工場では、作業員がMR(複合現実)を使って部材の組み立てや検査を進めており、加工や製作の工程でも3次元データの活用が進み始めた。作業場には40インチの大型モニターを置き、3次元モデルで確認しながら部材を組み立てる姿もある。取引先の建設会社とはモデル認証を前提としているため、途中の図面提出が不要になったほか、最終段階における大幅な変更も無くなり、作業の手戻りも大幅に減少した。

 「やるからには最大限の効果を引き出したい」。竹島社長は3次元データの全面活用に向け、Teklaを軸にした一気通貫のデータ連携環境を整えようと、今後はシステムをTeklaに一本化する計画だ。生産管理や在庫管理にもデータ連携させ、出来高をリアルタイムに把握する試みも始める。「21年6月をめどに本格運用に切り替える」と明かす。

 創業以来、関西を中心に仕事をしてきた同社は首都圏での受注が増加し、現在は首都圏の比率が6割を超えるまでになった。組織規模は現在150人だが、来春6人の社員を迎えるように、着実に規模の拡大を続ける方針。「まだ人は足りていない。生産を効率化し、省人化を突き詰めなければ成長はない」と、Teklaを軸にした一貫体制への期待を強く持っている。

モデリング体制の充実に乗り出す


 「自由度が高く、カスタマイズも効く」と竹島社長が評価するように、生産スキームに見合った使い方ができる点がTeklaの強み。同社は新たにリリースされたモデル共有機能『Tekla Model Sharing』も10ライセンスを導入した。設計グループ内の生産性をさらに向上させ、モデリングの協力会社との連携を強める手段としても有効と判断した。「プロジェクトを複数人で同時にモデリングできれば、生産性はさらに高まる」。同社は3次元の生命線となるモデリング機能の拡充にも乗り出し、協力会社を含め総勢40人体制を確立する方針だ。

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