【2020年総括記者座談会】新型コロナ 構造転換促す③ | 建設通信新聞Digital

4月25日 木曜日

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【2020年総括記者座談会】新型コロナ 構造転換促す③

 2020年は1月以降、世界が新型コロナウイルス感染症拡大防止の対応に追われた。全世界で経済活動が停滞、日本国内でも2020東京オリンピック・パラリンピック開催が1年延期されたほか、社会・教育活動にも大きなブレーキがかかった。コロナ感染防止対策を行いながら施工を進めた建設産業も、民間発注案件を中心に一部発注や引き渡しの延期のほか、海外プロジェクトでは工事中断を余儀なくされた。一方、コロナ禍での産業・企業の対応は、結果として建設DX(デジタル革新)の取り組みを加速させた。20年を総括する。

◆入社式、イベント、総会の中止/景気の低迷食い止め

新型コロナは決算、株主総会など企業にとって最も重要なイベントに影響を与えた。写真は株主総会で2段階方式を採用した戸田建設の総会前風景


A ことし最大の話題は新型コロナウイルス感染拡大だ。建設産業にどのような影響を与えただろうか。

B 世界各国がそれぞれの人・モノの往来を閉ざし巣ごもりに入ったことで、製造業やサービス業、卸売業といった非製造業の低迷で景気の急速な悪化が進む中、建設業は倒産・雇用・受注など各種統計で他産業ほど新型コロナの影響を受けていないことが浮き彫りになった。

C 建設市場はこれまで防災・減災、国土強靱化対応への3年間集中投資などもあり、公共投資は安定的に推移しているほか、建築分野も旺盛な民間設備投資意欲に支えられてきた。ただ、民間の設投意欲は新型コロナによってブレーキがかかったほか、各自治体も一部公共投資予算をコロナ対応に振り向けるケースがあった。

D 業界内で先行きへの不安が広がっていたにせよ、建設業が景気の悪化・低迷を食い止める業種として踏ん張ったのは事実だ。例えばコロナ第1波の状況下でも4月から7月までの4カ月間、東京商工リサーチの調査によると業種別企業の倒産が前年同月比で減少し続けたのは10業種中建設業だけだった。雇用でも建設業が防波堤の役割を担い続けた。実際、経済規模と雇用人数が最大の東京の建築・土木技術者の7月新規求人数は前年同月と比較して、4割減、3割減などの業種が相次ぐ中、主要11産業中唯一9.8%減の1桁台にとどまった。

E 東京都内では都発注工事の上期(4-9月)開札が前年同期比24%減で、工期のしわ寄せを懸念する声が上がっていた。中小建設業にとっては大きな影響だ。

F 新型コロナの思わぬ影響と言えば、3月期決算企業の決算開示と株主総会への影響は外せない。もう1つ、建設産業界と行政にとってなじみがあった霞が関ビルの「東海大学校友会館」の営業終了もコロナの影響を映す出来事だった。こちらの方は、個社の入社式、周年イベント、業界団体の総会・懇親会など縮小・中止などに追い込まれるなど大きな影響を受けた。

G 決算作業の遅れは、政府が4月に行った緊急事態宣言で7都府県の全事業者に対する「オフィス出勤者の最低7割削減」要請が決定打となった。だから政府などは有価証券報告書や四半期報告書などの提出期限を9月末まで一律延長したほか、定時株主総会の延期や計算書類などを別手続きにする2段階方式(継続会)、オンラインも活用するハイブリッド型総会導入提起など支援姿勢を鮮明にし続けた。

C でも建設産業界で、株主総会を2段階方式にしたのは、戸田建設と大成温調の2社にとどまった。

1月の建設業関係11団体新春賀詞交歓会

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