熟練技術者が寄り添う環境づくりで伝承
アイマップシステムは従来、店社や作業現場、個人のパソコンなどにばらばらに残され、活用されることのなかった過去の施工管理記録(書類、写真、図面、設計図書、計測データ)や施工過程での受発注者のやり取り、マニュアル、技術論文など、あらゆるデータをスキルデータプラットフォームに蓄積し、地図上にプロットして必要な時に必要な場所で抽出・活用できるシステムを目指している。
今回の試行では、過去の歩掛かりなどをベースに独自開発した工程予測システムを使い、熟練技術者が事前に予見した工程が遅れそうなポイントで会議などを開き、プラットフォーム上のデータを使いながら遅延の要因となり得る項目を指摘して遅延の芽を摘んだ。
システム開発を続けている淺沼組の田村泰史戦略事業推進部新技術事業化推進室課長は「熟練者は遅れそうなポイントを感覚的に知っている。これをシステム上で見える化し、注意すべき項目を指摘することで、技術者の“気付き”につながる」とし、コンソーシアムで参加している北大の高野伸栄教授も「集中的に管理するポイントをどのタイミングにするかが重要になる」とシステム活用の有効性を評価する。
日々の現場巡回状況も画像や動画で蓄積し、蓄積情報に対して熟練技術者がコメントを挿入できるため、若手技術者は次の作業で注意すべき点などを頭に入れて現場巡回できる。試行現場でも是正事項の早期発見につながった事例が2件あった。

現場でスマートフォンなどを使ってシステムを試行している
プラットフォームには、例えばコンクリート試験時に観察すべきポイントや品質低下の過去事例、創意工夫の情報なども蓄積し、コンクリート試験時に注意すべき事項といったことを検索・抽出・閲覧できるため、品質向上にもつながる。試行現場では、発注者による臨場検査でもアイマップシステムの通信システムを活用して協議内容をプラットフォームに蓄積した。
現場技術者は、現場状況の写真や計測データなど検査時に必要になりそうなデータをプラットフォームから検索・抽出して地図上にプロットしておくと、立会者からの質問にも迅速に回答できる。システムを現場付近の5Gエリアで利用して通信検証も実施した。
試行結果を踏まえ今後は、データ登録手順の簡素化やデータ容量の拡大を進める考えで、将来的には熟練者の感覚を再現するアルゴリズムの開発と、それに基づくアドバイス機能を付加、国土交通プラットフォームなどの外部データとの連携も想定している。
学が実質関与の産学連携
コンソーシアムの立ち上げでは、持続可能で汎用的な技術を開発するため、アカデミックな部分での論理的・戦略的な仕掛けが必要になると考え、実質的に学が開発に関与する産学連携を目指した。
キャンパスクリエイトの高橋めぐみ産学官連携コーディネータの支援を得ながら連携先の大学機関などを探索し、高野教授が建設マネジメント運営の観点でのシステム活用考察、上出特任准教授がシステム利用者の心理についてアドバイスする体制を確立した。

現場を視察した左から、高橋氏、 高野氏、田村氏、上出氏