【熟練技能をAIに】淺沼組の「Ai-MAP SYSTEM」が現場適用段階に | 建設通信新聞Digital

4月29日 月曜日

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【熟練技能をAIに】淺沼組の「Ai-MAP SYSTEM」が現場適用段階に

 淺沼組が開発を進めてきた「熟練技能維持システム」が、現場への適用段階まで深化してきた。熟練技能者の動きの記録や見える化システム、蓄積データをもとにした生産予測システム、コミュニケーションツール、位置情報のマッピングシステムなど各種ツールをパッケージ化した「Ai-MAP SYSTEM」(アイマップシステム)として開発を進めている。アイデア次第で各ツールを組み合わせれば、熟練技能者の動きをもとにした具体的な生産性向上策を検討できるなど可能性は大きく広がる。

◆“気付き”促し生産性向上/ニーズに応じカスタマイズ

アイマップシステムのベースとなるのは、ヘルメットに付けるGPS(全地球測位システム)・モーションセンサー内蔵型カメラとセンシング技術を組み合わせ、自己位置を推定して地図上に記録する「Ai-LOGGER」(アイ・ロガー)などのツールだ。さらに、「Ai-MOTION」(アイ・モーション)を使えば、モーションセンサーで熟練技能者の姿勢だけでなく、鉄筋を結束する際の指への力の入れ具合や手首の動かし方といった詳細な部分までを記録できる。熟練技能者が現場内を移動した軌跡や動き、技能者が見た映像のデータを記録することで、熟練者と未熟練者の動きの差を把握でき、教育ツールにもなる。
生産予測システム「Ai-SYS」(アイ・シス)では、蓄積した熟練技能者の位置・映像情報をAI(人工知能)で高度解析し、現場内の特定個所での滞在時間や特定作業にかかる時間、作業経過日数ごとの投入人数などを踏まえ、投入人数に応じた作業進捗といった現場の生産活動を予測できる。人員を最適に配置する仕組みを明瞭化したり、人員の投入時期・人数などの監督員による正確な意思決定を補完して最適な進捗管理を実現できるシステムとすることが目標だ。
開発を手掛ける田村泰史土木事業本部建設マネジメント室兼技術設計第2グループ課長は、「技能のアーカイブとAIをうまく連携させることが、このシステムの特長になる。現場での経験をうまく活用して、次世代の技能者の“気付き”を促進させるシステムにできれば」と話す。
「Ai-TEC」(アイ・テック)は、通話が可能なモバイル端末を持った技術者・技能者が音声と映像を遠隔地の管理者などに送れるシステムだ。出来形の検査や構造物の劣化度合いを遠隔地の熟練者が判断したり、災害時に遠隔地の指揮者が現場の様子を見ながら指示を出したりできる。構造物の打音検査個所と音の響き具合などを記録できる「Ai-SERCH」(アイ・サーチ)も組み込んでおり、構造物点検者の効率的な動き方や点検すべき個所の教育にも活用できるとみられ、アイ・ロガーやアイ・シスとの組み合わせによっては、構造物の点検作業などの効率化にもつなげられる可能性もある。
田村課長が「建設業の生産性向上だけでなく、異業種の生産管理や海外のニーズも模索しながら開発を進めている」と語るとおり、全ツールの一括利用や個別ツールだけの利用も想定しながら、ニーズに応じて活用者がカスタマイズして活用幅を広げ、育てられる。利活用方法を特定目的に限定していないことが、このシステムの大きな可能性となっている。
淺沼組では、28日から30日まで、千葉市の幕張メッセで開かれる「建設・測量生産性向上展2018」で、アイマップシステムを出展する。アイ・モーションやアイ・ロガーなどのデモンストレーションを実施する予定。各ツールをさまざまなアプローチで来場者に提示することで、アイマップシステムの利活用方法についてのニーズを探りたい考えだ。