【BIM2021】竹中工務店 デジタルファブリケーションを推進 | 建設通信新聞Digital

4月30日 火曜日

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【BIM2021】竹中工務店 デジタルファブリケーションを推進

 竹中工務店は、BIMや先端のデジタル技術で建築生産プロセスを変革し、施工段階での圧倒的な生産性向上を目指す「竹中新生産システム」を進めている。同社の設備領域では、施工BIMモデルをデジタルファブリケーション、総合資材管理システム、施工管理などに一気通貫で活用し、生産性を向上させる取り組みを進めている。関係企業を巻き込みながらBIM連携を拡大し、協力会社の生産工程改善も含めて生産性向上の最大化を、BIM連携しやすい「Rebro」で取り組んでいる。

 竹中新生産システムは、プロジェクト川上段階の施工計画の作り込みと、BIMに代表されるデジタル技術を駆使した効率的な生産準備により、施工のフロントローディングを進め、生産性向上を実現する。着工までのリードタイムを有効活用し、オフサイト化を進めるなどして現場の施工管理に要する作業時間や工数の最小化を目指す。

施工BIMモデル作成から施工管理までのBIMデータとデジタル技術の活用フロー


■製造工程と連携し、ヒューマンエラーを防止
 設備分野を代表する取り組みとして施工BIMモデルの一貫活用がある。具体的には意匠、構造と取り合いを調整した上で設備モデルを作成し、関係者に承認された施工図(施工モデル)を作成する。そこに配管の材料加工の割り付けや仕様などの詳細な情報を入力、加工会社の加工図や納品書などを作成するソフトとデータ連携する。加工会社はBIMデータをそのまま利用でき、入力の手間を削減し、転記ミスなどヒューマンエラーを防止する。作成した加工図データをそのまま加工機に入力し、配管やダクトなどを切断・加工するデジタルファブリケーションを実施する。

 さらに、施工BIMモデルから固有のIDやBIMの属性情報を持つ管理用QRコードを発行し、各部材に貼り付けて資材管理に活用する。

 現在、配管では加工データとの連携やQRコードの付与を進められ、ダクトでは大手加工機メーカーとの連携に向けて協議している。電気は、ユニット配線加工図との連携やバスダクトの部品との連携を進めている。竹中工務店東京本店設備部の大熊敦設備施工BIMグループ長は「デジタルファブリケーションにより作図時間の削減、製造ロスの減少、短納期が実現できる。参加企業も増えたので配管加工のデータ連携を強化するとともにダクトや電気へ対象を拡大する」と説明する。

大熊グループ長と平川部長(右)


■ジャストインタイムの搬入実現
 QRコードは総合資材管理システムに活用する。都心の現場では、道路渋滞などにより搬入搬出が予定どおりいかず、膨大な手間が発生することが多い。この課題を解決するため、竹中工務店、メーカー、協力会社が資材の状況を共有する総合資材管理システムを開発した。東京の有明と横浜の山下ふ頭に資材倉庫を確保し、都心で進める工事の資材を一次的に保管、各現場の工程に合わせてジャストインタイムで資材を搬入する。

 工場の出荷状況、場外倉庫の入荷・出荷状況、場内の置き場登録などの情報を活用し、資材がどこにどれだけあるか把握する。同社東京本店設備部の平川直之部長技術担当は「管理状況を関係者が共有できるため、相手の仕事の状況を見て出荷をコントロールするなど管理工数の削減につながる。現場に置く資材が減り、作業が効率化される」と指摘する。

■仕事を現地で終える仕組みづくり
 一方、製造工程で作成したデータを再び現場に戻し、出来高管理や検査記録などの施工管理に活用する。施工を合理化するデジタル技術と連携し、クラウド上の一元管理を進めている。

 例えばスリーブの施工管理では、施工BIMモデルのスリーブ情報と現地での照合、記録作成を効率化する。紙でチェックする野帳をデジタル化してクラウドに置き、タブレット端末上で寸法、合否結果や写真を入れてクラウドに保存する。紙媒体による記録の破損や紛失の心配はなく、どこでも、だれでも、いつでも検査記録を確認できる。また、照度測定、水圧検査、風量測定など測定機器とBIMの連携も進めている。施工BIMモデルに予め測定に必要な情報を入力し、現地でタブレット端末上に測定機器からの無線通信による測定データを取り込み、クラウドに保存し、各種検査における管理効率の向上に取り組んでいる。

 また、検査帳票類もクラウド上で自動作成されるとともに施工BIMモデルに検査記録も反映される。業務の自動化により、管理時間を20%程度減少したデータもある。大熊グループ長は「現地で野帳に記録した情報を事務所で清書しようにも別の仕事が入り、作業を夜間や休日にまとめて行うことが多い。『現地の仕事は現地で終える』ことが必要になる」と意義を語る。

 そして、「施工BIMモデルは施工図としての利用にとどまらず、製造、ロジスティクス、施工管理などのシーンで情報を付加しながらシームレスにデータ連携する。連携が広がるほどメリットが大きく、元請業者、専門工事業者、機器資材メーカー、代理店、加工業者など、ものづくりに関わるさまざまな工事関係者が、各々の立場で生産性向上を図ることができる。建設業全体として生産システムの抜本的な変革に取り組み、発展させたい」と意気込む。



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