【記者座談会】西松建設株買い増し鎮静化 | 建設通信新聞Digital

4月20日 土曜日

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【記者座談会】西松建設株買い増し鎮静化

A 西松建設による自社株買いが完了したね。

B 村上世彰氏に関連するシティインデックスイレブンス(シティ社)などは9月時点で西松建設の株式を25%保有していたが、これを西松建設自身が公開買付で買い取ることで、シティ社などの保有割合を大幅に引き下げた。まだシティ社などが保有する株の全数を買い取ったわけではないので完全決着とは言えないが、残りの保有株も市場で売却する約束をしているようだし、シティ社などによる西松建設への要求は落ち着くだろうね。

C 当たり前の話だが結局、シティ社などの狙いは、資産を多く保有し、比較的株価が安い建設会社のPBR(株価純資産倍率)を1倍にして利益を得ることだ。建設業界の構造改革を本気で目指したものでないことが分かったのではないか。株価上昇と同等以上の利益が得られれば売るということだからね。

B シティ社などは西松建設の自社株買いに応募した後、東亜建設工業株を9.35%(11日)まで、大豊建設株を34.43%(5日)まで、それぞれ買い増すなど、まだ建設株への関心を示している。

C 一方、英国のアクティビスト(物言う株主)で、以前から日本の建設株に関心を示してきたシルチェスター・インターナショナル・インベスターズは18日までに、これまで13%超を保有していた奥村組株を12.93%まで、戸田建設株を12.08%まで、それぞれ保有割合を下げた。日本の建設株のうまみがなくなっているのかもしれないとも思ってしまう。かつては見向きもされなかった建設株がアクティビストから関心を示されるようになったことは、悪いことではない。改めて投資家に魅力のある資本政策と投資家との対話に目を向ける必要もあるだろう。

協調領域生かした競争力強化が必要に

自律施工の技術開発は各社にとって競争領域だが、土研の取り組みは、競争の中にも協調すべき領域があるとも言える


A ところで、土木研究所が進めている「自律施工技術基盤」の開発が佳境に入っているようだね。

B 土研では、建設機械とソフトウェアの間でやり取りする制御信号の共通ルール案をまとめている。現状は、自律施工用の建機を開発するに当たって各建機メーカーが施工会社と1対1で開発を進め、メーカーのハードと施工会社のソフトの間の信号は各社の独自ルールとなっている。この制御信号を「協調領域」に位置付け、すべてのメーカー、施工会社が統一ルール(データリスト)に基づき、ハード・ソフトを動かすようにしようということ。自律施工技術基盤は、この協調領域のルールや研究開発フィールド、電子制御化した建機、バーチャル空間で建機の動きを再現するシミュレーター、ミドルウェアなどで構成する。

C 協調領域といえば、鹿島や竹中工務店、清水建設などが立ち上げた「建設RXコンソーシアム」でも触れていた部分だ。建設施工ロボット・IoT(モノのインターネット)分野のうち、自動搬送ロボやタワークレーン遠隔操作といった建設施工の中核部分ではない周辺部を協調領域と位置付け、各社が個別に開発するのではなく、コンソーシアムで協調して開発しようということだ。

B 土研のいう協調領域とは、建機とソフトウェアの間でやり取りする制御信号の部分だけで、必要最低限に抑える見込みだ。

C 協調領域と競争領域の切り分けは難しいところで、関係者が統一認識を持てるのか、気になる。でも、そんなことを言って、従来のように各社が同じような技術を別々に開発していると、働き方改革や生産性の面で他産業にまた引き離される。異業種やベンチャーなどとの連携も含め、各社は協調領域の技術をうまく活用しながら競争領域の強化にもつなげようとしているのではないかな。



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