【記者座談会】土木学会が海外インフラ展開変革で提言/村上グループ、西松の株式買増中止要請受け入れ | 建設通信新聞Digital

4月26日 金曜日

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【記者座談会】土木学会が海外インフラ展開変革で提言/村上グループ、西松の株式買増中止要請受け入れ

 土木学会が「海外インフラ展開に向けた変革のための提言」を声明として公表したね。

 提言の中では、国際競争力の激化による日本技術の優位性低下、拡大し続ける世界のインフラニーズ、人口減少に伴う国内市場の縮小といった現状を踏まえ、従来の請負業から脱却し、インフラを所有・運営するサービスプロバイダーへの移行などを提案している。

 「何にも増して第一に取り組むべき課題」としては、日本のインフラ関連産業が海外事業に挑戦する上で、経営や法規、ファイナンスなどの知識、俯瞰(ふかん)的な思考力を持った「新たな人材の確保と育成」を挙げた。「企業風土の変革」も重要視し、ゼネコンや建設コンサルタント、インフラ事業者、金融、教育機関、政府のそれぞれに向けた提言を盛り込んでいる。

 提言検討会の森昌文委員長は、「(いまは)ODA(政府開発援助)にしがみついている状況だが、(これからも)おんぶに抱っこが続くと思うのは間違い。アジア、アフリカの各国はインフラ整備について外からの投資に期待している。日本は遅れているが、まだ間に合う。これが今回提言した変革の意味だ」と、提言に込めたメッセージについて説明した。

 家田仁土木学会長も「(海外インフラ展開に関して)ある種の限界感がある。これを突破するには自己転換(変革)が必要だ」との認識を示した。さらに「土木にとって市場拡大が活力となる。活力がないところに進化はなく、進化がないところに質はない。だから活力には市場が必要だ」と核心に触れた。

 提言が、日本のインフラ関連産業がグローバル競争に勝ち抜く上での突破口となることに期待したいね。

提言公表に合わせて開かれた会見で家田会長は、「土木にとって市場拡大が活力となる」と訴えた(5月28日、土木学会講堂)

◆限界感突破へ自己変革を

 ところで、西松建設がシティインデックスイレブンス(シティ社)や村上世彰氏などの「村上グループ」に対し株式保有割合を拒否権が発生する25%超にしないよう要請する株主総会議案を取り下げた。シティ社は大豊建設の株式を30%以上保有するなど建設会社向けの活動を強化しており、一部では業界再編をもくろんでいるといううわさもあるが。

 2日にシティ社は、経緯とあわせて、事案における西松側の質問とシティ社の回答書を公開した。その中で、西松はシティ社から「大豊建設との経営統合を繰り返し提案された」としている。シティ社はこれに対し、建設業界において経営統合はメリットがあるとしつつ、大豊建設との統合は「検討対象候補の1つとして紹介したに過ぎない」とし、西松による「異業種との協業による企業価値向上」との方針を受け入れている。

 シティ社の基本的な要求は、「政策保有株式を売却し、多額の含み益がある保有不動産をリートに売却してバランスシートマネジメントとROE(自己資本利益率)の向上を行う過程での自己株式取得」だ。西松が中期経営計画で示した資本政策に理解を示す一方、不動産売却額には不満を示している点などを見れば、要求を満たした結果による「不動産の含み益を加算したPBR(株価純資産倍率)1倍の株価が目標」と、回答書の文字面どおり読むのが素直な見方なのかな。目標を達成すれば株式を「売却する」としているし。

 今回は株式の買い増し中止要請を受け入れ、25%超となる追加取得も「行わない予定」とした。ただ、西松の要請が2022年3月期第2四半期決算発表までの期限付きであり、「9月末からさらに数カ月」は追加取得中止要請があれば応じる意向を示しているところを見ると、まだまだ目標達成に向けて行動してくることが想定される。

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