◇受発注者双方が危機感持ち現場の変革を
A 日本建設業連合会と国土交通省各地方整備局などが共催する「2024年度公共工事の諸課題に関する意見交換会」が13日の関東地区を皮切りにスタートした。
B 4月に適用が始まった時間外労働の罰則付き上限規制への対応は重要課題だ。日建連は、全ての発注機関に対し、既契約を含む全ての工事への完全週休2日の原則導入、導入が困難な場合の発注者指定による交代制の適用を要望する。上限規制の順守を前提とした適切な工期での発注や受発注者間の協議による柔軟な変更、全体工期の中で受注者が工事の始期と終期を決められる「フレックス方式」の活用拡大も呼び掛ける。
C 日建連が23年11月に実施した土木工事に関する会員アンケートでは、7割弱の現場で原則ルール(月45時間、年360時間以内)に抵触する結果となった。対応を誤れば今後の円滑な事業推進に支障が出かねず、受発注者双方が危機感を持って建設現場の変革に取り組む必要がある。
A 上限規制をクリアするためには時間外労働の発生要因の多くを占める書類作成の負担の軽減は必須だ。
D 提出書類の削減や簡素化は進んでいるが、日建連の調査では「書類作成マニュアル」に反する資料作成依頼が絶えないという。規制順守に向けた増員や業務の外注に伴う対策費用もかさんでいる。
B 意見交換では、マニュアルの現場事務所レベルでの運用徹底、業務負担の削減効果が大きい「書類限定検査」の全工事への導入、書類作成に必要な期間を工期に付与することの検討などを求める。
D 中国の故事「歯亡舌存(しぼうぜっそん)」にあるように硬いシステムほどもろい。重要なのは柔軟で幅広いオプション(選択肢)を持つことかもしれない。
◇良好な市場環境で受注時採算重視強まる
A ところで、大手・準大手ゼネコン26社の24年3月期決算が15日までに出そろった。
E 豊富な手持ち工事が順調に進捗(しんちょく)し、連結では23社が増収となった。8社は過去最高の売上高で市場環境としては全体的に良好な一年だったと言えるのではないか。
C 国内の旺盛な建設需要が下支えとしてあるが、収益面では9社が減益となるなど、明暗が分かれた。ただ資機材価格は依然として高止まりの状態にあるが、価格転嫁も進んだことで業績への影響は限定的になっているようだ。
F 利益に関して言えば総じて国内建築事業でのマイナスを国内土木事業がカバーする構図は変わらない。市場環境は堅調なだけに採算を重視した受注戦略は、各社ともより一層徹底していくだろう。
E 上場大手4社では特に鹿島と大林組は海外事業の好調ぶりが目立つ。ODA(政府開発援助)に頼らず現地政府や現地法人からの直接受注や開発型の事業展開に取り組んできたことが奏功し、好決算に大きく寄与している。
A 25年3月期は時間外労働の上限規制適用が始まった初年度となる。
C 設備工事業が鍵を握る。ゼネコン各社の受注工事の進捗や収益にも大きな影響を与えるだろう。
F 空調設備工事を主力とする上場大手6社の24年3月期決算も15日までに出そろったが、全社が増収営業増益となり、売上高、各利益などで過去最高を記録する会社も多い。まさに絶好調といったところだ。手持ち工事量も極めて高い水準にあり、当面は売り手市場が続く。
C ゼネコンにとってはいかに「選ばれるか」が問われる。受注時採算とともに、サプライチェーン全体の最適解を求める姿勢がより重要となる。