◇建設費高騰分の確保に難しさも
A 森ビルが2024年版の東京23区大規模オフィスビル市場動向調査を発表したね。
B 空室率は19年以来4年ぶりに低下に転じ、5.8%となった。コロナ禍収束に伴うオフィス回帰や好業績・成長企業の人材採用拡大などを背景に、オフィス需要の回復基調が続いているようだ。
C 今後5年間の年平均供給量は、過去平均を下回る見込みだが、延べ10万㎡以上の物件は増加傾向にある。引き続き、大規模開発が進む日本橋・八重洲や赤坂・六本木エリアなど、都心部へのオフィス集積が進む見通しで、これらのエリアのオフィス需要も続くとみられる。
B 立地重視の企業が増加傾向にあることで、都心中心部の人気エリア以外では、空室率が10%を超えるエリアもある。また、「設備グレードの高いビルに移りたい」という新規賃借予定企業は少なくなく、築年数の古い物件の一部は苦戦を強いられている。
D 都内を出ると、4月時点の横浜ビジネス地区(関内、横浜駅、新横浜、みなとみらい21地区)の平均空室率は、9.2%(三鬼商事調べ)と、主要都市と比べて空室率の高さが際立つ。中でも、みなとみらい21地区は3月以降15%を超えている状況だ。都心と比べて平均賃料が高水準なことも、その要因の一つだろう。多くの空室が残る大規模新築物件も出てきている。
C オフィス市場は楽観視できる状況にない。建設資材や労務費の高騰などを背景に、計画の延期や見直しを余儀なくされるプロジェクトが出てくる中、比較的エンドユーザーに訴求しやすいマンションやホテルに比べ、オフィスは供給可能床が十分に存在するため単価を上げにくい。つまり、建設費の上昇分を捻出しづらいらしい。地域によっては今後、オフィス開発を控える動きも出てくるだろう。
◇攻防の本丸、財務省にもアプローチ
A 最近の紙面を見ていると、改正国土強靱化基本法で政府による策定が法定化された「国土強靱化実施中期計画」を巡り業界団体の動きが活発になっているようだね。
B 現行の5か年加速化対策は20-24年度が対象で、今が最終年度に当たる。能登半島地震をはじめ、全国各地や近隣国などでも大きな地震が頻発し、毎年のように風水害も繰り返される中、国土強靱化の取り組みを切れ目なく推進するのが狙いだ。
C 日本建設業連合会は4月下旬から、政府・与党幹部への要望活動を順次展開。日建連は、閣議決定の中で7兆円台半ばとされている5か年加速化対策の国費を7兆5000億円と想定すると、4年目に当たる23年度までに累計進捗(しんちょく)率が87%に達し、最終年度はこれまでに比べて大きく目減りすると指摘。新たな実施中期計画を年内早期に策定することなどを求めた。次期計画の期間や規模は全くの白紙状態だが、資材高騰やさらなる加速化の必要性を踏まえると、5年で20兆円、7年で30兆円の規模感が必要とも訴えた。
D 今回の一連の要望活動で特筆すべきは、攻防相手の本丸と言える財務省にも直接アプローチした点だろう。日建連としても初めてのことで、大臣を筆頭に、副大臣や事務次官にも要望書を手渡した。財務当局としても国土強靱化の必要性は十分に認識しており、関係省庁と今後の取り組みをしっかりと調整していく姿勢などを示したという。
C 全国建設業協会も同様に、次期計画の早期策定や現行計画を上回る事業量確保を政府・与党に働き掛けた。まずは、6月にまとまる予定の「骨太の方針」に、業界要望が「どのような文言」で盛り込まれるかが注目される。