【産業界のデジタル化を推進 】 魅力的な建築で交流創出 利便性提供へ デジタル庁 小林史明副大臣  | 建設通信新聞Digital

5月6日 月曜日

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【産業界のデジタル化を推進 】 魅力的な建築で交流創出 利便性提供へ デジタル庁 小林史明副大臣 

 産業全体の人手不足への対応やコロナ禍による非接触化を推進するため、ICTを活用して生産性向上を実現するデジタルトランスフォーメーション(DX)の重要性がますます高まっている。2021年9月に発足したデジタル庁は、デジタル社会の実現に向けた司令塔の役割を担い、建設業界で進む建設DXの追い風となることが期待されている。小林史明副大臣にデジタル庁が推進する施策のポイントや建設DXへの期待などを伺うとともに、デジタル社会の実現に向けた施策や技術を紹介する。

--デジタル社会の司令塔としての役割と、『産業のデジタル化』『デジタル社会を支えるシステム・技術』など重点計画の推進体制について
 「デジタル庁の大きな役割は、まず、官公庁や自治体、都道府県の職員が、国民や業務で行政とのやりとりが必要な人と、スムーズにコミュニケーションができるように、行政のインフラをデジタル化することです。デジタル庁が直接企業や国民の皆さんにサービスを提供するのは現状ではごく一部です。基本的には、国民の皆さんの多くの接点になっている行政組織のインフラや業務全体をデジタル化することで、国民や民間企業の方の利便性が高まることが第一のミッションです」
 「2つ目は、官民で使えるデータの整備です。建設業界を例に挙げると、建物を建てるために必要なさまざまなデータが、データベースとしてきちんと整備されていないという問題があります。例えば、登記や相続が明確にされていないなど、所有者不明土地の問題もあります。さらに、そのデータが自治体に閉じられており、例えば、東京都大田区に所在する建設会社が港区に建物を建設しようとする場合、港区まで行って水道管やガス管の情報を役所の窓口で取ってこなければ、建設できない状態になっています。これはものすごく面倒です。必要なデータをどこからでも閲覧できるようにするため、データを正確かつ、アクセスしやすく整備することで、皆さんのビジネスの創造性や生産性を高める役割があります」
 「3つ目は、デジタル庁だけではなくいまの政府全体のミッションになります。岸田政権ではデジタル大臣のもと、副大臣も政務官もデジタル庁と並行して規制改革と行政改革、そして建設業界にかかわるPFIも一緒に担当しています。これはすごく意味のあることです。建設業界でも多いと思いますが、さまざまな提出物を紙で提出することが決まっていたり、原本を保存しなければいけないなど、国のルールや慣習によって手段がアナログに限定されていることで、必要以上に手間がかかっている状況があります。業務改革を実施しようとしてもそれらのルールによって阻まれていることがあるため、デジタルにそぐわない法律、条例、できればその先にある皆さんの業務慣習などまで見直すことによって、デジタル活用のメリットを生かしやすい状況をつくっていくことも、いまの政府の体制として重要なミッションと考えています」

--『デジタル田園都市国家構想』の実現に向けたデジタル庁の役割について
 「いままでの地方創生と、今回岸田政権で打ち出したデジタル田園都市国家構想の違いをよく聞かれます。一番の違いは基本的な考え方で、デジタル田園都市国家構想は、デジタルを活用してデータ連携や共通基盤づくりをし、政策や課題解決を全国の地域で適用できるようにします。地方創生は地域ごとに街おこしをすることを前提に、さまざまなトライアルが行われました。地域の実験としては自由度が高かったものの、良いものまでその地域だけにとどまって行う予算目当てになっているので、隣の自治体ですらそのデータや事例が使えません。共通の基盤で動かせるよう、デジタル庁が司令塔としてコーディネートしていきます」

--スーパーシティ構想、建築物のインテリジェント化、地域活性化に果たすデジタル庁の役割について
 「デジタル庁単体というよりも、政府として、デジタルと規制改革、行政改革、PFIを一体的に進めていこうとしている遠路にぜひ注目していただきたいです。建設業にかかわる皆さんと一緒に実現したいのですが、地方だからこそ豊かというか、『東京も良いけれど、ここに住むとより良いな』と思える場所をつくっていきたいのです。例えば、わたしの地元である広島県福山市では、パークPFIを導入しました。図書館の前の原っぱにPFIでカフェをつくったのですが、人の流れが生まれ、新しいライフスタイルが生まれました。建築の力のすごさを感じました。確実に人々に新しい余暇の過ごし方、働き方を提案しましたし、そのエリアの価値が上がったことをみんなが実感しました。こういう楽しみや喜びを全国の人々に感じてもらいたい。地方にこそ空いた公共空間がたくさんあり、そこに魅力的な建築で人の交流を生み出すことで、地方はおのずと成長の機会を見いだしていきます。そこにデジタルは利便性という価値を提供できる存在で、利用者はオンラインで予約ができたり、スマートロックで解錠ができたり、自治体としては、Wi-Fiや電力自給のための太陽光と蓄電を併設して災害対応の拠点にできたり、電力自給のための太陽光と蓄電を併設して災害対応の拠点にできます。このような使い方や成功事例を共有しながら、全国的に施策として広げていきたいと考えています」

 「建築物のインテリジェント化は、デジタルなしには実現しません。また、世界的な潮流によるもう1つチャンスは、CO2排出量削減を必ず行わなければならないことです。2030年までの目標であったとしても、家庭と事業分野で30-40%削減が求められています。そうすると、建物でどのように省エネを実現していくかが非常に重要になってきます。政府の政策目標としても重要ですし、そこをマネジメントしようとするとデジタルを使うので、マネジメントする仕組み自体がシステムとして売れるようになってきますから、新しい産業になります。そこにも成長分野が出てくると考えています」

--BIMやCIMなど3次元データ活用などによるインフラ整備の生産性向上や、デジタル化による新産業・新技術が創出されている建設業の状況をどう見ているか
 「ほかの産業にとっても良いモデルになり得ると思います。産業でデジタル化というと、第一段階は自分たちの業務を効率化することから始まり、続いてデジタルだからこそできるより高度なサービスを提供し、付加価値を上げていきます。これはBIM、CIMで行い始めています。3次元ですべて行うことによって、より効率的で価値の高いものをつくっています。さらに、そこで生まれてきた自社用のソリューションを他社にも売るようになっています。これはものすごく理想的だと思っています」
 「建設業では目視点検、打音検査、常駐専任規定などをこれから横断的に緩和していこうと思っています。人手不足が加速する中、そうすることで遠隔目視のシステムが新しいマーケットになります。そのマーケットが数倍に膨れあがると、そこに新しい成長産業が生まれてきます。人手不足への対応で生産性が向上するとともに新しい市場ができ、新しい付加価値が創出され、ものすごく大きな成長になるというモデルを描いています。さらに、アンドパットなど異業種から入ってきた方々が、建設業界の構造をよりスマートにしようと取り組んでいるのも、良い流れだと思います」
 「政治の世界でも同じですが、テクノロジーの進展で問題の解決の仕方は変わってきていると思っています。それ以前は課題や勝ち筋が明快で、一つひとつの問題を解決していけばよかったことが多かったと思いますが、社会も市場も成熟して複雑な問題だけが残りました。それを解決しようとすると、一方向から見ても解けないので、多様な人材・メンバーが必要になります。その意味で建設業界では、別の業界から人材が入ってきて、いままで建設業界にいた人では気付かなかった視点で問題解決が生まれてくるようになってきています。非常に良いモデルだと思っています」



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