【BIM/CIM未来図-ゼネコンはいま-鹿島㊤】3次元ありきの流れ確立へ 床版更新工事で初トライアル | 建設通信新聞Digital

4月29日 月曜日

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【BIM/CIM未来図-ゼネコンはいま-鹿島㊤】3次元ありきの流れ確立へ 床版更新工事で初トライアル

 鹿島の構造設計部橋梁・インフラ更新グループで、3次元モデルデータを活用した設計効率化の試みが実用段階を迎えようとしている。トライアルとして床版更新工事に適用し、PC箱桁橋梁などにも対象範囲を拡大する方針。南浩郎設計部長兼グループ長は「3次元ありきの流れを確立し、設計から施工へとプロジェクト全体の生産性向上に結び付けたい」と先を見据えている。国土交通省のBIM/CIM原則化を背景に、土木分野の3次元データ活用が広がる中、従来に比べて約5割の設計効率化を目指すという同社の試みを追った。

変更に対してモデルを自動生成できるダッソー・システムズ『CATIA』を導入


 2015年から国の特定更新事業がスタートし、高速道路会社各社では大規模リニューアル工事が動き出した。難易度の高い工事では設計段階から施工者が関与するECI方式が導入され、施工者であるゼネコンにとっては主体的に調査・設計段階からプロジェクトに参加するケースが増えている。同社は構造設計部の橋梁グループを橋梁・インフラ更新グループに改め、更新工事への対応を強化してきた。

 同グループではより効率的に設計を進めながら詳細な施工検証が実現する手段として、3次元モデルデータの活用を考えていた。南氏は橋梁プロジェクトに参加した測量会社が表計算ソフトを使ってコマンド入力から3次元的な図面を作成する独自の取り組みを目の当たりにして「3次元による設計効率化に以前から着目していた」と明かす。

 従来の2次元に縛られず、プロジェクトの最初から3次元設計に着手できれば、部材干渉など手戻りのない設計が実現する。本格導入に向けて3次元ツールの調査に乗り出したのは2年前のことだ。ベンダー各社にヒアリングし、パラメトリック機能によって設計変更に合わせてリアルタイムに3次元モデルが自動生成される追随性能をもつダッソー・システムズのクラウド版『CATIA』の導入を決めた。同グループの佐々木優介設計主査は「モデル追随性が設計効率化に有効な機能になり得ると直感的に感じた」と振り返る。

 当初は、需要が多い一般的なPC箱桁橋梁への採用を検討していたが、大規模な道路橋の更新プロジェクトを受注したタイミングもあり、トライアルとして床版取替工事への採用を決めた。遠藤史設計長は「床版の長さや据付け方法など現場の条件が変更されると、その都度、設計を変更せざる得ないだけに、変更に合わせてモデルが自動生成されることによって、図面の対応は迅速に進められる」と期待している。

 とはいえ、3次元ツールを導入するだけで設計作業が効率化するわけではない。同社は21年6月からダッソー・システムズ、大塚商会の2社と連携し、床版モデルのテンプレート整備などを進めてきた。佐々木氏は「条件設定の数値を入力するだけで、誰にでも3次元モデルを構築できるようになった」と強調する。すでに床版更新ではモデル生成の枠組みを確立しており、実プロジェクトへの適用にめどを付けているという。

 初のトライアルプロジェクトでは比較検証を目的に、従来の2次元設計と同時並行でCATIAを活用した3次元設計に取り組む。図面整合性の確認に加え、歩掛かりも検証し、社内展開に向けた最終準備を進める。南氏は「いよいよ来年度から実用段階のステージに入る」と力を込める。



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