復建調査設計では、新入社員に対して入社後1カ月もの期間を費やし、DX(デジタルトランスフォーメーション)研修を開いている。DX推進センターBIM/CIM推進室の小川裕介氏は「BIM/CIMを含むデジタルデータ活用の有効性を認識し、配属後の業務で役立ててもらうことが狙い」と説明する。特にBIM/CIM関連の研修プログラムに力を注ぐ背景には国交省のBIM/CIM原則化が始まり、単にソフトの操作をマスターするだけでなく、業務にBIM/CIMデータを効果的に活用していこうという前向きな「使う意識」を植え付けたいとの思いがある。
5日間の新入社員向けBIM/CIM研修では、初日に土木設計の基礎やBIM/CIMの概論を学んだ後、3日間かけて社内の業務ツールに位置付けるオートデスクの3次元設計ツール『Civil 3D』やプロジェクトレビューツール『Navisworks』などの操作を習得する。研修最終日には5人一組で発注者の立場になり、その解決策をBIM/CIMデータを活用して探る場を設けている。他のチームの前で説明することでプレゼンテーション能力も磨いている。
同社は、社内各部署や派遣社員、グループ会社も含めた4日間のBIM/CIM研修も随時開いており、組織全体にBIM/CIMスキルの拡大を推し進めている。社内資格も創設し、BIM/CIMの技術水準を底上げするとともに、資格取得を保有するツールライセンスの活用条件にも設定している。資格はツール操作をマスターした「モデラー」、モデル作成を教えることができる「インストラクター」、責任者として発注者などに説明できる「プロジェクトマネージャー」の3段階に区分けし、現時点で延べ200人が資格を取得している。
BIM/CIM推進室の天野政之室長は「社内にはモデルの作成だけでなく、統合作業や提案づくりなどより実践的な活用を意識させている。業務課題に対していかにデータを利活用すべきか、使い方の部分を養うことが重要になる」と強調する。日頃の業務でもBIM/CIMデータ活用が広がりを見せている。道路設計では住民説明の場で3Dプリンターを使った模型活用の提案、交差点部の設計では排水計画立案に3次元を使い、排水勾配を面的に検証する事例も出てきた。2次元主体の業務でも、あえて3次元モデルを使うケースが多くなり、施工段階を見据えた収まり検討の意識も芽生えている。
新入社員のDX研修のうち、BIM/CIM研修はハンズオンを軸に約1週間もの時間を費やす。BIM/CIM推進室が講師を務め、主軸ツールであるCivil3Dの操作技術を徹底して教え込む。研修課題にBIM/CIMを選択した社員は引き続き2週間の研修課題にも取り組む。同社では若手が育ち、業務でBIM/CIMを積極的に活用し、いずれ教える立場になる循環の流れが構築されようとしている。