【BIM/CIM未来図】BIM/CIM人材(中) 伝承コンテンツを資産化して共有/AIを育てる意識に芽生え | 建設通信新聞Digital

9月24日 水曜日

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【BIM/CIM未来図】BIM/CIM人材(中) 伝承コンテンツを資産化して共有/AIを育てる意識に芽生え

建設コンサルタントを対象にしたオートデスクの会合「BIM/CIMラウンドテーブル」では、生成AI(人工知能)を活用した独自の人材育成システムを運用する大日コンサルタント(岐阜市)の取り組みも紹介された。同社は職場を離れて行うOFF-JT(職場外訓練)研修を実践している。推進役の飯田潤士取締役ICT設計部署長は「ベテラン技術者の退職期を見据えた場合、OJT(職場内訓練)だけでは若手の育成が間に合わない。伝承すべき内容をコンテンツとして残して資産化する試みを5年前から展開している」と強調する。

OJTとOFF-JTの考え方


BIM/CIMを含む同社のDX(デジタルトランスフォーメーション)人材育成は、2021年からの6カ年計画で展開しているDX戦略の中に位置付けている。社員の持つあらゆる業務上の暗黙知を形式知化して共有する専用システム『D-ナレッジ』を自社開発し、全社員でコンテンツを蓄積・共有している。この5年間で約3500件の記事(ナレッジ)が投稿された。対話型AIチャットによる検索によって活用の幅も広がっている。今年2月に中部地方整備局が開催した第4回中部DX大賞の敢闘賞も受賞した。

これまで上司や先輩技術者は、部下や若手から業務に関連したさまざまな悩みや質問に対して、その都度応じてきた。同じような質問をされるケースは頻繁にあり、そのたびに時間を費やす大変さがあった。そこで説明した内容を記事化し、D-ナレッジに蓄積して共有する流れを位置付けた。ナレッジマネジメントシステムを構築する企業は多いが、社内から情報が集まらない課題がある。同社はランキングシステムと連携し、投稿のポイント換算によって投稿上位者を表彰する制度も設けており、現在は社員の半数以上がD-ナレッジに月10回以上アクセスしている状況になっている。

生成AIを活用することで、蓄積した記事を対話形式で手軽に取り出せるようにもしている。例えば業務ツールとして定着しているオートデスクの土木設計ツール『Civil3D』による線形情報の入力方法を求めれば、参考になりそうな関連記事が自動で列挙される。飯田氏は「使い勝手の良さを感じる社員の多くにはAIを育てる意識が芽生え、情報を充実させようと積極的に投稿するようになった」と振り返る。

同社では、社内研修を動画で必ず残すことで、教育コンテンツとしての活用が広がり始めている。誰がどれだけ閲覧しているかも集計しており、今後は人材育成の判断指標としても活用する計画だ。引退前のベテラン技術者には社内講演を依頼しており、後身に伝えるべき細かなノウハウまで社内の資産として残している。19年からはBIM/CIM関連の成果を発表する「D-1グランプリ」もスタートした。その全ての講演を動画化し、AI文字起こしツールでテキスト化した上で、AIに読み込ませて学習用テキストにも仕上げている。

飯田氏は「ベテラン技術者の引退が増え、OJTだけでは追いつかない状況を打開する手段として、OFF-JTと組み合わせることで、より効果的に技術の伝承を行うことができる」と強調する。重要なのは「受け手である若手社員の独学力をどこまで向上させることができるかにある」と焦点を絞り込む。教育コンテンツの充実と手軽に利活用できるD-ナレッジが基盤になり、同社のDX人材育成は着実に成果を上げている。「何よりも近年の生成AIの急激な進化によって、D-ナレッジがより有効なツールになっている」と付け加える。

大日コンサルタントが自社開発した「D-ナレッジ」のランキングシステム



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