震災教訓生かし回復力向上/命救うインフラに事前投資
マグニチュード9クラスの日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震で最大約20万人が亡くなると推計される中、「われわれの想定や想像を超える事態を整理し、次に備えるため、事前投資は欠かせない」という。災害に強いまちづくりを基盤に「軽さと強さを併せ持つ竹のようにしなやかな復元力を備えた“レジリエントな社会”の実現」を希求する。
津波対策では東日本大震災を教訓に「まずは命を救う対策が必要だ」と強調する。避難時間を稼ぐための防潮堤や津波避難タワーなどのインフラ整備とともに「長期的には介護老人保健施設などを安全な場所に移設する必要がある」と指摘する。
さらに「受援の拠点になる」という道の駅などの利活用などを含め、防災だけでなく介護や環境、観光などの施策と組み合わせた防災拠点の複合化を呼び掛ける。また、ハザードリスクを踏まえ、安全な場所にレジリエントでコンパクトなスマートシティを構築することで、「長期的なインフラの維持管理や、さまざまな施設が集積するため地域の利便性も高まる」と地方が抱える社会的課題の解決にも言及する。
避難対策についても「高齢者・要支援者のための自動車や小型モビリティーなどを含めた多様な避難手段を用意しておく必要がある。全員が逃げ切るための“備え”のレベルを段階的に高めなければならない」と主張する。
震災の記憶の伝承では「専門家は言葉や数字を重視しがちだが、脳科学の分野では絵や映像などの分かりやすい視覚的表現は大きな効果がある」と話す。「関東大震災は火事の“赤”、東日本大震災はがれきの“灰色”、原発事故の放射能は“無色”とそれぞれの災害の特徴を端的な“色”で記憶にとどめておくことで、潜在的な意識に残りやすくなる」とし、視覚的表現を風化の防止に活用していく考えだ。
3月末に9年間務めたIRIDeSの2代目所長を退任した。「芭蕉の花をイメージしたIRIDeSのロゴマークは上下を逆転させると“災”という字になる。震災を克服し、災いを転じさせていきたい」と引き続き“BOSAI”の世界標準化に力を注ぐ構えだ。