【BIM/CIM未来図DX】丹青社③ 設計と施工を一体的に取り組む/現場担当にRevit整備 | 建設通信新聞Digital

5月10日 金曜日

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【BIM/CIM未来図DX】丹青社③ 設計と施工を一体的に取り組む/現場担当にRevit整備

 丹青社がBIMの成功体験を共有するために創設した社内表彰『BIM AWARD』はこれまでに3回を数える。初代グランプリに輝いたプロジェクトは、デザイン部門と制作部門が連携した設計・施工一体のBIM活用事例となり、内装・ディスプレー業界のBIMトップランナーとして丹青社を外部に印象付けるきっかけにもなった。

 高さ20mにもおよぶ巨大なエントランスの内装を手掛けた同社は、実施設計と施工を担った。建築施工者から引き継がれた基本設計の2次元図面をBIM化した上で、設備や構造を担う企業から提供されたBIMデータと組み合わせた統合モデルによって細部にわたって収まりを確認。そのデータを制作部門にも共有し、造作にも活用した。設計を担当した村井義史BIMデザイン局BIMマネージャーは「設計と施工を一体で取り組んだ当社としての初の事例でもあった」と強調する。

社内制度『BIM AWARD』で成功体験を共有


 第2回のグランプリに選定した複合施設『YANMAR TOKYO』の地下1階に誕生したイベントスペース『HANASAKA SQUARE』は、クリエーティブディレクターの佐藤可士和氏がトータルプロデュースし、同社が設計部分を担った。20種類のパーツや約6000枚におよぶ桜の花びらを幾重にも重ねる空間表現の具現化にBIMをフル活用した。村井氏は「積算連携にも取り組み、予算管理の最適化を実現した事例」と明かす。

 複合施設や博物館などでは装飾パーツに加え、LED照明などの使用面積も多く、設計段階から積算情報をリアルタイムに把握することが制作コストの最適化につながる。BIMで設計したプロジェクトは施工でもBIMを活用することを推奨している同社にとっては、生産性向上の手段としてもBIMを位置付けている。

BIMをフル活用した『HANASAKA SQUARE』


 先行するデザイン部門の後を追うように、施工を担う制作部門もBIMの普及が着実に進展している。現場に携わる技術者約300人全てにオートデスクのBIMソフト『Revit』を整備し、活用事例も増えてきた。山田孝志執行役員テクニカルセンター長は「まだ部分的な活用にとどまっているが、現場の特性を踏まえ、有効にBIMを使いこなすケースも目立ち始めた」と手応えを口にする。

 制作部門のBIM導入は2021年からスタートした。テクニカルマネジメント統括部制作企画課の松山新吾課長は「当時は各事業部の数人にRevitライセンスが与えられ、皆で勉強会を重ねながら徐々に仲間を増やしてきた」と振り返る。デザイン部門では施主やプロジェクト関係者と合意形成を図るコミュニケーションツールとして機能しているBIMだが、施工領域の制作部門では360度カメラを使い、現況画像とBIMモデルを比較しながら収まりや仕上げの確認を行う現場などもあり、生産性向上ツールとしてBIMが機能している。

 リニューアルプロジェクトでは、図面類が現存しないケースも多く、制作部門が3次元計測で取得した点群データをデザイン部門に渡すケースもあり、BIMを軸に制作部門とデザイン部門が双方向に連携する流れも強まってきた。山田氏は「設計と施工の連携だけでなく、工場にもデータがつながることでよりBIMの価値は高まる。制作部門ではBIMデータを協力会社にも渡すことを前提に動き出した」と強調する。

図面がない場合は点群データからBIM化



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