【BIM2024⑰】日本版BIMライブラリの構築 2025年度の運用開始へ総力を結集 | 建設通信新聞Digital

5月1日 木曜日

B・C・I 未来図

【BIM2024⑰】日本版BIMライブラリの構築 2025年度の運用開始へ総力を結集

 BIMライブラリ技術研究組合(BLCJ、奥田修一理事長)は、2025年度のBIMライブラリの運用開始に向けた取り組みを加速させる。同年度から始まる建築確認申請のBIM図面審査と連動するBIMオブジェクト標準.2.0やライブラリサイトの社会実装に向けてBLCJの総力を結集する。各部会長による23年度の検討成果と24年度の取り組み方針を紹介する。
◆BIMライブラリ技術研究組合理事長 奥田 修一/社会実装へ実務で使えるツールを開発・改良

奥田氏


 BIMライブラリ技術研究組合(BLCJ)が設立されて今年度で6年度目に入りますが、この間BIM技術とそれを取り巻く環境は大きく進展しています。国土交通省の建築BIM推進会議で多くの建築関係団体の参画のもとに幅広い検討が進められてきていますが、2025年度の建築確認申請へのBIMの一部活用が打ち出されたことからさらなる推進体制の強化が図られています。22年度第2次補正予算では建築BIM加速化事業が創設され、BIM活用事業者の拡大が進められていますが、23年度補正予算においても引き続き加速化事業が実施されております。

 BLCJといたしまして昨年度は建築確認や仕様書情報との連携を視野に入れたBIMオブジェクト標準Ver.2.0を策定・公表するとともに、社会実装に向けて試験用ライブラリサイトの試行検証を実施しております。また、22年度補正予算の加速化事業では、設計方法に関する調査の実施主体となり、BIM実務の第一線で活躍するメンバーによるタスクグループを設置して集中的に検討を実施しております。

 今年度も引き続きBIMの社会実装に向け、建築実務で活用できるツールの開発・改良にBLCJの総力を結集して取り組む所存ですので、関係の皆さまのご指導、ご協力をよろしくお願い申し上げます。



在り方部会長(東京工業大学名誉教授)安田 幸一/技術的なステップアップへAPI

安田氏


 今年度は技術研究組合活動の6年度目で、2年間延長した技術研究組合の研究成果を整理し、それをどのように社会実装につなげ、また組織の在り方を検討・整理する年度です。

 前年度には、BLCJ BIMオブジェクト標準Ver.2.0の公表、試験BIMライブラリサイトのデモ版の公表と試行検証を開始し、2025年度の実用開始に向けて準備を行っています。また、ここ3年間継続して検討してきた公益的視点からの試験用ライブラリサイトの継続的な維持・運用に関して、プラットフォーマー(BIMライブラリサイト運営者)との協議を継続してきており、ライブラリサイト運用の方向性が明らかになりつつあります。また、ライブラリサイトの技術的なステップアップとして、民間ライブラリサイトやメーカーライブラリサイトのポータル的な役割を担うために、API導入の可能性を検討しています。

 今年度は、これらの研究成果や協議、果たしてきた社会的な役割を踏まえて、BLCJの今後の在り方を組合員とともに整理していきたいと考えています。


建築部会長(芝浦工業大学教授)志手 一哉/空間オブジェクトの検討本格化

志手氏


 昨年12月12日に、公開されたBLCJ BIMオブジェクト標準Ver.2.0(標準Ver.2.0)は、属性標準を検討する考え方とその利用方法を具体的に示したもので、属性情報の伝達・共有のための共通言語です。その拡充と検証が昨年度の建築部会の主な活動でした。

 最大のトピックは、仕上表や設備の室諸元表、さらには維持管理・運用の基盤となる「空間オブジェクト」検討チームの立ち上げです。昨年度の助走を経て、本年度から本格的に活動を開始します。構造については、免振装置の属性情報項目と構造部材に対する公共建築工事標準仕様書のデジタル化の検討を進めました。意匠は、各種建具で共通する属性情報項目名称の検討、車いす使用者トイレパックの属性項目の検討に取り組みました。さらに標準Ver.2.0の属性項目をサンプルモデルに入力し、実用性を検証しました。これらの活動を、2023年度から建築BIM推進会議に設置された標準化タスクフォースと役割分担しながら実施しています。

 24年度は、意匠は外部データベースとの連携、構造はカタログサイトの検討、空間は属性情報項目の整理、情報活用はBIMオーサリングツールに実装した際の課題の把握を実施する計画です。これらの先に、BIMオブジェクトの整備、属性情報項目や値を扱うアドオンプログラムの検討等、実務で属性情報を活用する環境が整備されていくと期待しています。


設備部会長(東京都立大学准教授)一ノ瀬 雅之/確認申請の機器オブジェクト拡充

一ノ瀬氏


 設備部会では、昨年度「BLCJオブジェクト標準Ver.2.0」の公表を行いました。また、建築確認BIM図面や仕様書情報との連携を見据え、設計実務や確認申請に必要な機器オブジェクトの拡充追加をし、建築BIM加速化事業の一環として、設備BIMソフト5社による確認申請用サンプル建物での再現性確認と利活用検証を行い、さらに標準仕様書との整合性の確認を行ないました。設備分野で対象とする範囲は、延べ面積がおおむね1万㎡以下の事務所のS2からS6までの段階とし、対象オブジェクトは、過年度業務で作成したオブジェクトに加えて、追加拡充した、設備系:送風機1種類、空調機4種類、防火貫通処理1種類、電気系:煙感知器1種類です。

 また、昨年度からはBIM図面審査や、その後のBIMデータ審査を見据えて、BIMデータの起点となる「空間要素」の属性情報標準の整理が重要と考え、確認申請と設計段階で必要な属性情報の整理に取り組みました。

 今年度は「BLCJオブジェクト標準Ver.2.0」仕様の社会実装に向けて「BIMベンダー/メーカー/ユーザー」各社の意向を踏まえ、社会実装の展開を進める予定です。また、今年度もBLCJ各部会、建築BIM推進会議の関係部会・団体との連携も図り、BIMライブラリの普及推進を進める予定です。


運用部会・連携部会長(東京都立大学客員教授)山本 康友/BIMMSの部材DB、COBieと整合

山本氏


◇運用部会
 運用部会は、BIMライブラリ運用のために整備した基本規約、各種規約類について、その後の進展に合わせた見直しを予定しています。また今年度は、知的財産権(著作権等)の保護と適正な利用を促進する国際的な枠組みであるクリエーティブ・コモンズを用いて、より実践的な観点から、技術研究組合の成果の保護と利用促進について整理する予定です。

◇連携部会
 連携部会は、計画、設計、施工、維持管理の各段階の情報伝達の円滑化の検討を行ってきました。
 昨年度は、公共建築工事標準仕様書の18章塗装工事について、標準仕様書・特記仕様書とBIMの属性情報との円滑な連携のため、情報の1対1の対応や、BIMの属性情報から塗膜層を設定することが可能であることを示し、これが正確な情報連携等につながることを示しました。
 また引き渡し、維持管理・運用段階の標準化に向けた検討では、約3万棟の公共建築の保全に用いられている保全マネジメントシステム(BIMMS)の建物基本情報、部材データベース、台帳管理情報等とBIMの属性情報、空間・設備等の管理情報である国際標準(COBie)との整合性を検討した結果、部材データベース等は、BIMの属性情報と対応していることが整理できました。
 今年度は、仕様書とBIMの連携、引き渡し情報とBIMの連携について検討を深めていく予定です。


R4補正タスク グループリーダー(工学院大学教授)岩村 雅人/図面審査用3点セットの完成目指す

岩村氏


 補正タスクグループ(TG)では、昨年度はBIMを用いた設計者の確認申請(BIM図面審査段階)を実現するために必要な整備を設計者の視点から検討を進め、確認申請時に利用する『入力基準書』『標準参考テンプレート』『設計者チェックリスト』の3点セット(案)を、設計団体とも協働しながら作成しました。できるだけ具体的検討にすべく、普段からBIMを実務で使用しているメンバーが実際に小規模建物のBIMデータを作成しながら検討を進めました。建築はRevit、Archicad、GLOOBE、Vectorworksの4ソフトウエア、構造はRevit、設備はRevit-MEP等の5ソフトウエアを使いました。検討ソフトの種類を増やし、中小規模の設計事務所等の利用も考慮しました。

 今年度は、上記の3点セットを完成させるとともに、国の技術的助言にひも付き取り扱うことができるよう必要な内容を詰めていくことを予定しています。今年度の検討においては、面積算出に関する基準や集団規定について整合性確認に関わる項目の追加、また、大規模な建物や複合用途など実践的な検討を行います。このほか、2025年度のBIM図面審査に向け3点セットの試行的公開と幅広い実務者からの意見徴集、普及に向けた手引書等の作成を行います。国土交通省をはじめ関係団体との調整が必要と考えています。特に設計関係団体の皆さまのご協力・ご支援が、BIM図面審査の円滑な実施に向けて肝要なことと考えております。




【B・C・I 未来図】ほかの記事はこちらから



建設通信新聞電子版購読をご希望の方はこちら