【BIM2022】日本版BIMライブラリの構築/BLCJ BIMオブジェクト標準ver.2.0の確立と実装を目指して | 建設通信新聞Digital

5月4日 土曜日

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【BIM2022】日本版BIMライブラリの構築/BLCJ BIMオブジェクト標準ver.2.0の確立と実装を目指して

BIMライブラリ技術研究組合理事長 奥田修一/役割分担や連携の検討進める

BIMライブラリ技術研究組合理事長 奥田修一氏

 BIMライブラリ技術研究組合(BLCJ、奥田修一理事長)が発足してから4年度目を迎えた。建築BIM推進会議において「BIMモデルの形状と属性情報の標準化」の実務での活用に向けた取り組みを進めてきた。今年度は「BIMオブジェクト標準ver2.0」の検証と確立と並行して社会実装に向けた検討が本格化する。本特集ではBLCJの昨年度の検討状況と今年度の活動について紹介する。

 BIMライブラリ技術研究組合(BLCJ)が設立されて4年度目に入り、いよいよ取りまとめのフェーズを迎えています。この間国土交通省の建築BIM推進会議においては建築関係の数多くの団体等の参画のもと幅広い検討が進められ、多様なモデル事業の実施と検証によって、より具体的な課題が明らかにされてきています。BLCJも建築BIM推進会議の検討体制の中で「BIMモデル属性情報等の標準化」を担う部会として位置づけられ、関連する他部会と連携を図りつつ検討を進めてきています。
 昨年度は建築確認との連携・仕様書情報との連携を図るBIMオブジェクト標準ver2.0の検討・整理を進め、建築実務での活用に向けた検討を実施いたしました。
 今年度はBLCJ BIMオブジェクト標準ver2.0の試行検証と確立を行うとともに社会実装に向けてオブジェクト供給に関する関係者との役割分担や連携についての検討を進めてまいります。これまでの成果を目に見える形にする重要な段階であり、BLCJの総力を結集して取組む所存ですので共同研究パートナーの国立研究開発法人建築研究所をはじめ関係の皆さまのご指導、ご協力をよろしくお願い申し上げます。



在り方部会長(東京工業大学教授) 安田幸一氏/試験ライブラリの配信を検討
 今年度は技術研究組合活動の4年度目で、当初予定の4カ年活動計画のまとめの年度です。活動の目標は、(1)BLCJ BIMオブジェクト標準ver2.0の試行検証と確立、(2)その標準をオブジェクト等の形態で利用者に配信・ダウンロードする試験システムの整備、(3)標準を含め、全体を継続させるためのビジネスモデルの確立、(4)建築確認との連携・仕様情報との連携の拡大の4つです。
 在り方部会では、これらのテーマの中で、(2)と(3)に関して検討を行ってまいりました。今年度は(2)について試験ライブラリを構築・試し運用して、標準ver2.0によるオブジェクトをどのように利用者に配信できるかを重点的に検討してまいります。
 またBIMソフトウェアベンダーのご協力が得られれば、BIMソフトウェアへの標準ver2.0の取入れも検討を進めていく予定です。さらにジェネリックオブジェクトとメーカーオブジェクトの紐づけを試験的に検討していく予定です。また(3)に関する将来の組織・業務の在り方に関して、BIM推進に寄与する視点から継続して検討する予定です。
 BIMは常に技術開発が行われており、グローバルな視点から潮流を展望し、産官学が協力して将来を見据えた活動を進めていかなければなりません。
 関係者、関係部会、団体などのご理解、ご協力をよろしくお願いいたします。

建築部会長(芝浦工業大学教授) 志手一哉氏/属性項目の効果を検討
 2021年度の建築部会は、設計事務所、ゼネコン設計部、建材メーカー、ソフトウエアベンダーなどの部会員およびBLCJ外の各団体と共同で属性項目(パラメータ)の共通化と、その活用環境の検討に注力して活動しました。意匠では、窓、扉、シャッター、エレベータ、トイレ空間を対象に、設計から施工へのデータ引渡しに必要なパラメータの整理を進めました。構造は関連各団体で調整の上で、ST-Bridgeに基づいた「BLCJ構造標準〈改訂3版〉」を公表しました。加えて、共通化した属性項目をBIMオブジェクトに追加したりその値の入出力をしたりするなど、設計の実務で属性データを活用するために必要なアドオンツールに必要な機能を整理しました。
 また、BLCJがオブザーバ参加して日本建設業連合会が議論を進めている仮設ライブラリは、タワークレーン、ホイールクレーン、クローラークレーンを対象に属性項目を含めたオブジェクト標準を策定しました。また、国土交通省建築BIM推進会議「建築分野におけるBIMの標準ワークフローとその活用方策に関するガイドライン」のS3に基づいたサンプルBIMモデルを作成し、部会3や部会4と共用し、これらの部会活動にも利用してもらいました。
 22年度は、BIMオブジェクトのパラメータを利用することの効果を検討すると共に、活動の一区切りとして「BLCJ BIMオブジェクト標準 ver2.0」の仕様の公開に向けて鋭意取り組んでいく所存です。

設備部会長(東京都立大学准教授) 一ノ瀬雅之氏/設備オブジェクトの拡充
 設備部会では、「BLCJオブジェクト標準ver2.0」の確立を目指して、建築確認や仕様書情報との連携を見据えて、今まで設備部会で整備してきた設備機器に加えて、制気口やダンパー、バルブ、防災器具などのオブジェクトを拡充しました。また、属性情報の拡充として「弱電、防災設備機器等の仕様拡張」や、「維持管理・FMに引き渡す情報整理」、「コミッショニングに必要な情報整理」、「建築確認との連携に必要な仕様拡張」を行い、建築BIM推進会議で定義されたS2-S6の「各ステージでの属性仕様一覧」を機種別に整理しました。
 また、部会3(建築確認におけるBIM活用推進協議会)と審査シナリオを元に建築確認申請や省エネ適判で必要な属性情報の確認もしました。そして、昨年度までに整備を行ったBIMオブジェクトの検証を目的に、6社のBIMソフトによるサンプル建物での試行を行い、「S4(実施設計2)」を想定してRevitで元データを作成し、各々の設備BIM専用ソフトに展開変換を行い、サンプル建物と設備BIMモデルの再現性確認と利活用検証をしました。また、国土交通省連携事業でのオブジェクト試行も行い、維持管理での活用の検証を中心に実施しました。22年度は「BLCJオブジェクト標準ver2.0」の確立へ最終調整を行い、社会実装に向けてBIMベンダーやメーカー等との調整を行う予定です。そして、BLCJ各部会、建築BIM推進会議の関係部会・団体との連携も図り、BIMライブラリの普及推進を進める予定です。

運用部会・連携部会長(東京都立大学客員教授) 山本康友氏/目的別の整理を実施予定
◆運用部会
 運用部会は、BIMライブラリーの運用のために整備した各種規約類と共通項目を統合した「基本規約事項」を踏まえ、その後の進展に合わせて、規約類の見直しを予定しています。また、設計段階などにおける知的財産権(著作権等)についてもネイティブデータとBIM推進との基本的な考えを整理したうえで、今後のあり方について検討していく予定です。
◆連携部会
 BIMでは、BIMオブジェクトの属性情報をプロジェクトの各段階の異なるプレーヤーに伝達できることが重要であり、連携部会は、計画、設計、施工、維持管理の各段階への情報伝達の円滑化を図ってきました。
 昨年度は、公共建築工事標準仕様書(建築工事編、電気設備工事編、機械設備工事編)の各工種のデータベース化を行い、建築工事編は、BIMのデータベース化に馴染まない章を除いて検討が済んでおり、電気・機械設備工事編についても、ほぼ整理ができました。その中では、(1)BIMとの連携の容易さ、(2)「特記」を含む項目の抽出し易さ、(3)「特記」の選択肢の明確化、(4)「特記」記載の参照先の明確化を検討しました。
 今年度は、標準仕様書データベースを活用した効率的な特記作成を行えるようにしていくことと、標準仕様書データベースにおける情報最小単位(セル)に対してのID付与の考え方や属性情報のインポート、エクスポートの整理などを通して、特記仕様書の情報や属性情報が、施工計画書などに活用できるよう検討する予定です。その結果、設計から施工への情報伝達ミスの軽減や監理業務等の効率化が図れると考えています。
 また、完成引き渡し、維持管理・運用段階でのBIM活用に関する事例収集を踏まえ、運転(運用)、点検、改修および資産管理などの目的別の整理を行う予定です。



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