【記者座談会】国交省の建築BIM推進会議 | 建設通信新聞Digital

4月29日 月曜日

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【記者座談会】国交省の建築BIM推進会議

A 官民一体でBIM推進方策を検討するため、国土交通省が「建築BIM推進会議」を設置してから約4カ月が経過するけど、検討状況はどうか。
B 会議自体はこれまでに3回開催し、7月の第2回会合では、BIMの活用で実現する将来像と、そこに向けて必要な取り組みの工程表(たたき台)を提示している。将来像では、「いいものが」つくれ、「無駄なく、速く」作業でき、「建物にも、データにも価値が」付与されるという3基準を整理。将来像の実現に向けては、マーケット機能を生かした官民の協調による先行的な取り組みや、将来を見据えた国際標準・基準への対応などが基本的戦略として打ち出された。2020年3月に19年度の検討成果をまとめる。
A 個別課題への対応は。
B 第3回会合で個別課題に対応する5部会の設置を決定し、具体的な検討も本格化している。標準的なBIMの活用方法を示すガイドラインなどを検討する「建築BIM環境整備部会」は4日に初会合が開かれた。延べ5000-1万㎡程度の一般的用途の新築事務所をモデルケースに、設計・施工・維持管理まで一貫した活用を目指して、各業務区分の考え方や役割分担、個別要素別のモデリングガイドなどを整理し、年度内に検討内容を会議に報告する。20年度からは実際のプロジェクトでガイドラインに沿った取り組みを試行したい考えだ。
C その他の4部会は推進会議に参加する各団体の活動を部会としてみなす。「BIMモデルの形状と属性情報の標準化」はBIMライブラリーコンソーシアムを改組した「BIMライブラリ技術研究組合」を中心に検討する。BIMを使った効率的で的確な建築確認検査は、7月に設立した「建築確認におけるBIM活用推進協議会」が担当する。BIMによる積算の標準化に向けては、日本積算協会を中心に検討委員会を設置した。「BIMデータの情報共有基盤の整備」はビルディングスマートジャパン(bSJ)が実施する。

4日に標準的なBIMの活用方法を示すガイドラインの策定に向けた検討を行う建築BIM環境整備部会の初会合が開かれた

建築設計界 国主導に評価と期待

A 会議など国交省の一連の取り組みに対する建築設計界の反応は。
D 国策として推進している国に比べ、「動きが遅い」といった不満も一部にはあるが、国の主導で領域をまたいだ各プレーヤーが一堂に会して具体的な推進方策を検討する会議の設置に対しては、評価と期待の声が上がっている。
E 「バスに乗り遅れてはいけない」というのが、建築設計事務所トップの共通認識だ。とはいえ、現時点で各事務所の取り組みには濃淡がある。設計はすべてBIMでこなすという事務所もあれば、効果があるところにだけ活用しているという事務所もある。あまり先行しすぎると、この先、国が出す方針とのずれが生じ、体制の見直しなど二度手間のリスクも生じることから、国交省の会議が一定の方向性を出すまで、静観する事務所も少なくない。
D BIMについては、膨大なデータの処理に時間がかかるといった課題がある。あるフェーズまでは効率化できるが、その先から非効率になるというケースもある。現場サイドでは、作業工程の管理が最も重要になる。BIMを使った場合、想定外の遅延などが発生するリスクも否定できないが、既存の手法であれば時間が読めるという部分は大きい。現時点では、「適材適所」での導入というのが実態だ。
A ある事務所のトップが言うように「普及の段階は一気に来る」可能性も高い。「その時」に対応できるだけの備えはしておいたほうがよさそうだ。

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