【BIM2021】国土交通省のBIM推進 発注者メリットの検証を深度化 | 建設通信新聞Digital

5月4日 土曜日

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【BIM2021】国土交通省のBIM推進 発注者メリットの検証を深度化

 建設に関連する団体が一堂に会し、“オール建設業”で日本のBIM標準化を検討する国土交通省の「建築BIM推進会議」が3年目を迎えた。BIMの健全な普及、発展の土台となる標準ワークフローの検証を進めるとともに、21年度は「先導事業者型」「パートナー事業者型」「中小事業者BIM普及型」の3つのモデル事業を展開し、ワークフローを深度化する。会議を支える国土交通省の和田信貴住宅局長に活動の成果と今後の展開を聞いた。

国土交通省住宅局長 和田 信貴氏


――「建築分野におけるBIMの標準ワークフローとその活用方策に関するガイドライン(第1版)」の現状と今後の展開は

 「2020年度は『建築分野におけるBIMの標準ワークフローとその活用方策に関するガイドライン(第1版)』(20年3月公表)を前提に、官民の建築プロジェクトで実際に課題分析やBIM活用の効果検証を行いました。特に民の部分は、『BIMを活用した建築生産・維持管理プロセス円滑化モデル事業』により試行検証しました」

 「試行の結果、標準ワークフローの大きな枠組みは汎用的に適用されたことが確認されましたが、細かな運用上の留意点やBIMの定量的な活用メリットなどが提言されました。これらを踏まえ、21年度からはガイドライン(第2版)の改定に向けて議論を進めたいと考えています」

建築BIM推進会議 今後の予定


――モデル事業で得られた成果と21年度の取り組み方針を教えてください

 「8つの採択事業により、特に維持管理段階へのBIMデータの円滑な受け渡しに向けた課題と、維持管理段階でのBIMの活用効果などが多く検証されました。また、設計段階から施工段階への情報の受け渡しや、設計段階での施工のフロントローディングなども検証されました」

 「成果として、適切にBIMを活用し、必要なBIMデータを受け渡すためには、事前の取り決めが重要であると提言されています。具体的には、BIMを活用するに当たり、事前に発注者からBIMデータの詳細度、運用方法等の要件提示をどのように行うか、また受注者はそれを実行する内容をどのように明確化するかを検討し、それぞれのプロジェクトから『BIM発注者情報要件(EIR)』『BIM実行計画書(BEP)』が提示されました」

 「そのほか、モデル事業に応募のあった中から、補助対象外ではありますが、14事業を『連携事業』として位置付け、検討いただきました」

 「これらの成果については、ガイドライン第2版への改定に向けた議論で活用してまいりますが、大変具体的かつ詳細な報告書等を作成していただいておりますので、広くBIMを活用する方の参考となるよう、国土交通省ホームページで報告書などを掲載するとともに、関係者のご協力のもと、成果報告会をウェブ上で実施し、多くの方にご視聴いただきました」

 「21年度のモデル事業は20年度と同様の『先導事業者型』、連携事業の位置付けを明確にした『パートナー事業者型』、さらに中小事業者へのBIMの普及を見据えた『中小事業者BIM普及型』の3つについて募集しています」

 「特に『先導事業者型』では、20年度で検証されていない課題分析(募集要領では商業施設、住宅や木造等を例示)を求め、特に重要な立場である発注者のメリットについて検証が不足しておりますので、BIMの活用による生産性向上、建築物・データの価値向上やさまざまなサービスの創出などを通じた発注者メリットの検証を求めています」

 「また、『中小事業者BIM普及型』では、中小事業者が、BIMの導入から活用にいたる業界共通のロードマップを示すとともに、複数事業者でチームを組み、地域で持続的にBIM活用を行う体制づくりを目的としています」

――部会や関係団体の活動を通じて得られた成果とデータ標準化などの展望は

 「20年度は関係部会・団体が連携し具体的な各プロセスの考え方やさまざまなモデリングガイド、パラメータリストなどが提示されています」

 「それぞれの検討が進展し、具体的になってまいりましたので、今後建築BIM推進会議では、検討の方向性や成果物の整合性確保など、よりきめ細やかな連携が重要となると考えています。また、すでに業界内でさまざまなBIMの活用実態がある中で、他分野とのデータ連携も見据えながら、どこまでデータの標準化を行うべきか、建築BIM推進会議で議論をしていく必要があると考えています」

――21年度の推進会議の取り組みテーマは

 「1月に建築分野のBIMの活用・普及状況を調査したところ、BIMの導入状況は約46%であり、導入していない理由として『発注者や業務上の関係者からBIMの活用を求められていないため』『CAD等で現状問題なく業務を行うことができているため』『BIMを習熟するまで業務負担が大きいため』などが多く回答されました」

 「新たな住生活基本計画(3月19日閣議決定)では、住宅の設計から建築、維持・管理に至る全段階におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進が掲げられています。国土交通省都市局では3次元都市モデルの整備(Project PLATEAU)が進められるなど建築情報であるBIMの活用が改めて注目されています」

 「21年度は、ガイドラインの改定と並行して、このような『人材育成、中小事業者の活用促進』や『ビッグデータ化、インフラプラットフォームとの連携』といった課題について、建築BIM推進会議で本格的に議論していく予定です。モデル事業などで知見を得つつ、現状の把握や今後の進め方などについて議論し、必要に応じて部会設置等も検討するなど、幅広い議論をさらに加速させていきたいと考えています」



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