【新たなステージへ】日事連会長 佐々木宏幸氏に聞く BIMが迎えるこれからの10年とは | 建設通信新聞Digital

4月26日 金曜日

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【新たなステージへ】日事連会長 佐々木宏幸氏に聞く BIMが迎えるこれからの10年とは

 日本でのBIMの展開が新たなステージを迎えた。民間プロジェクトが主体となる建築分野の生産プロセスの一貫したデータ活用に向け、官民一体の「建築BIM推進会議」の検討が進み、3月には『建築分野におけるBIMの標準ワークフローとその活用方策に関するガイドライン(第1版)』を策定した。発注、設計、施工、維持管理の多様な団体が参加し、官民でBIM標準化の取り組みが進むことで、プロジェクト全体を通じた生産性向上、ひいてはBIMを活用した建築市場全体の活性化に貢献することが期待される。今後進展するBIMの時代について、日本建築士事務所協会連合会の佐々木宏幸会長に聞いた。

佐々木宏幸 日本建築士事務所協会連合会会長


――BIM元年と言われた2009年からいままでを振り返って
 「国土交通省官庁営繕部、住宅局、設計3会などで構成する公共建築設計懇談会に十数年前から出席し、国交省のBIMガイドライン作成などとともに国内外の最新情報に接してきました。そうした情報を会員に発信するため、会長を務めていた栃木県建築士事務所協会で日本初のBIM学生コンペとなる『とちぎ建築プロジェクトマロニエ学生BIMコンペティション』を14年に開催するなど前向きにBIMの普及に取り組んできました」
 「現在は日本建築士事務所協会連合会もコンペの運営に参画し、全国の単位会の会員事務所員を対象に拡大しました。学生の教育に加え、社会人が業務で使うことが大切だからです。福岡、仙台などの単位会もそれぞれの地域の実情に合わせて実務者研修などを開いており、BIMの普及に向けた活動を行っています」

――19年度に建築関係団体を横断する建築BIM推進会議が設置されました
 「日事連は業務として直接設計にかかわる企業の団体であり、先頭に立ってBIMを推進する立場です。『BIMと情報環境ワーキンググループ』を中心に推進会議にかかわってきました。国交省が25年のBIM全面展開を目指す中、3月に『BIMの標準ワークフローとガイドライン』を作成できたのは意義あるステップだと思います。地方公共団体にも波及することを期待しています」
 「ガイドラインは5000㎡-1万㎡という一般的にBIMの活用で効率化が図れるであろう領域でワークフローを作成されたのではないでしょうか。活用する中で領域を広げ、大手から地方の中小事務所へと普及することを期待しています」

――会員事務所の取り組み状況は
 「19年に実施したアンケートは『導入済みで活用中』『導入済みだが未活用』を合わせて30%程度でした。この割合は前回調査から倍増しています。BIMは大組織ほど取り組みやすいと思われますが、難しいのは本会会員の多数を占める中小事務所です。立地も首都圏や中核都市、過疎地を含め多様性があり、施主の要求などの需要がないと進みにくいでしょう。まずは普及しやすいところから広げることが大切です」
 「小規模事務所が手掛ける案件でも施主との合意形成でBIMが素晴らしい効果を上げています。規模の大小によらず、メリットを見い出している個人事務所も多く、属する単位会をけん引している姿も見受けます。業務内容から需要を考えればよいと思います」

――これからのBIMの10年をどう見据えますか
 「経済界では今後5年程度でSociety5.0によるスマート社会への移行が一気に進むのではないかと考えられており、BIMもその一躍を担います」
 「新型コロナウイルスの拡大により大きな犠牲が出ていますが、その中でテレワークが一気に広がりました。ダメージを被りながらも働き方改革が進んでいます。設計は分業で進めるため、在宅勤務が容易なBIMは働き方改革と相まってさらに普及すると思われます。」
 「振り返ると第2次世界大戦など人類に深刻な被害をもたらした出来事の後に科学技術が飛躍的に発展した歴史があります。今回の大災害から学び、対処する力を身に着けることが最も大切です」
 「AIやIoTなど革新技術と建設業の連携が進み、設計監理体制も変化していかなければなりません。変化への不安はありますが、期待もしています。BIMは設計者の将来像にかかわり、次世代に継承していく有用なツールになることも多いに期待しています」

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