【記者座談会】関東大震災から100年/国交省が「群マネ」の検討会開催 | 建設通信新聞Digital

5月8日 水曜日

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【記者座談会】関東大震災から100年/国交省が「群マネ」の検討会開催

◇記憶を継承する取り組み必要

A 1923年9月1日に起きた関東大震災から100年が経過した。建設業界でも各種イベントが催されたほか、報道も例年以上に過熱した。

B 国土交通省と関東地方整備局は100年を契機としたシンポジウムを開き、全国建設業協会や日本建設業連合会などが後援した。日本建築学会も「100年後の日本の建築・まち・地域」と題した関東大震災100周年シンポジウムを開き、オンラインと合わせて約650人が出席するなど関心の高さをうかがわせた。

C 建設会社では、例年この時期に防災訓練を実施する会社も多い。取材記者の目からはいつも以上に気合が入っているように見えた。地震だけではなく、風水害や富士山噴火などさまざまなケースを想定して訓練に力を注ぐ姿が印象的だった。

A 手前みそだが、建設通信新聞もこの春から『レジリエンス社会へ』と銘打った企画記事を掲載した。谷公一防災担当相を皮切りに有識者や小池百合子東京都知事ら首長のインタビュー、建設会社の防災・減災の取り組みを紹介してきた。改めて建設業界が社会に不可欠な存在であるとともに、国土強靱化に向けた取り組みを加速する必要があると感じた。

C 話は少し変わるが、以前ある河川事業を取材していた時に印象深い話を聞いたことがある。治水対策で水害が減ると過去の被害の記憶が薄れるため、事業効果が持続的に理解されづらい状況に陥るという。

B 確かにそうかもしれない。「ブラックアウト」が発生した北海道胆振東部地震から6日で5年が経過した。災害大国・日本。どのように記憶を継承していくのか、報道の役割を改めて考えさせられるね。

多くの参加者を集めた関東大震災100年シンポジウム

◇全国展開へモデル地域公募

A 話題は変わるけど、国土交通省が「地域インフラ群再生戦略マネジメント」に関する検討会の初会合を先週に開いたね。

B 「群マネ」と呼ばれるこの考え方は、社会資本整備審議会と交通政策審議会の技術部会がインフラメンテナンスに関して今後取り組むべき施策をまとめた提言で打ち出したものだ。小規模市町村を中心に技術職員や予算の不足がインフラメンテナンスの課題となっている。そこで既存の行政区域にこだわらず、各地域の将来像に基づき広域、複数、多分野のインフラ施設を群として捉えてマネジメントすることが必要となっている。

C 提言ではマネジメント計画の策定と、計画に基づいた維持管理業務の実施の両プロセスで群マネを推進する考え方が示されており、これを受けて国交省は計画策定手法、実施手法それぞれを検討する二つの会議体を設けた。今回、両検討会の初会合を同時開催して議論を始めた。

D 会合では群マネの普及に向けて近く公募するモデル地域の考え方などを話し合った。モデル地域では国交省と契約した民間事業者が計画策定と業務実施の両プロセスを支援する。そこで知見を集めて計画策定の手引きを作成し、全国展開を目指す。モデル地域は市区町村や都道府県から応募を受け付け、3-5カ所程度を10月にも選ぶ予定だ。

B 会合では委員から効率的なインフラメンテナンスに向けて、対象インフラや実施エリア、市区町村をまとめることで、行政負担の軽減とともに民間ビジネスの活性化につながるといった指摘も寄せられた。

C 群マネによって業務の発注方式や規模はこれまでと大きく変わり、インフラの維持管理を支える地域建設業にとっても対応が求められるだろう。今後の動向に注目したい。

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