【記者座談会】高速道路更新、総事業費1兆円/労務単価、11年連続アップなるか | 建設通信新聞Digital

5月10日 金曜日

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【記者座談会】高速道路更新、総事業費1兆円/労務単価、11年連続アップなるか

◆未知の世界を見据えて対策推進

A 東日本、中日本、西日本のNEXCO3社が老朽化している道路構造物の更新計画の概略を公表したね。総延長約500㎞、概算事業費は約1兆円になるそうだね。

B 高速道路は老朽化が課題となっている。2032年3月には、3社が管理する高速道路延長約1万㌔のうち、6割で供用後40年以上が経過する。記者会見でNEXCO東日本の八木茂樹取締役兼執行役員管理事業本部長は「インフラ構造物の老朽化は避けて通れない問題だ。今後、供用後60年、70年と必ず月日が経つ。70年経過したインフラ構造物はほとんどなく、耐久性は未知の世界に突入する。新たな老朽化の要因が見つかれば、必要に応じた対策をする」と話した。

C 記者会見では、財源の確保に関する質問が特に多かった。国土交通省は、高速道路の更新や改良に必要な財源確保に向け、道路整備特別措置法で65年までとする料金徴収期間を延長する改正法案の国会提出を目指している。NEXCO3社のほか、首都高速道路会社と阪神高速道路会社も新たな更新計画を発表している。概算事業費は首都高が約3000億円、阪神高速は約2000億円と試算した。

B NEXCO3社が管理する高速道路のうち、既に約1360㌔では15年から更新事業を実施している。その事業費も当初想定した3兆円から現在は4兆円にまで膨れ上がった。労務費の高騰と物価上昇、消費税率の見直しが要因という。八木本部長は「民営化時点ではここまで大規模な更新は必要ないと考えていた。高速道路は大型車の割合が多いほか、積雪対策として凍結防止材を散布することが構造物に想像以上のダメージを与えている」と説明した。

老朽化し、ひび割れが発生しているコンクリート床版

政策的なてこ入れに期待

 

A ところで、わくわくというか、そわそわというか、業界全体が注目する毎年恒例の重大な節目が近づいてきたね。いまでは3月からの前倒し適用が定着してきたけど、新しい公共工事設計労務単価を巡る霞が関や永田町の動きはどうなっているのかな。

B 8日に参議院議員会館内で公共工事品質確保に関する議員連盟、いわゆる品確議連の総会が開かれ、主要業界団体からの要望聴取などが行われた。要望内容は多岐にわたるが、メインは技能者の処遇改善に向けた労務単価の継続的な引き上げだ。

C 出席した議員からは、労務費調査の結果に基づいて次の労務単価を設定するスキームは理解しているが、首相が物価上昇分以上の賃上げを求めている中では、政策的なてこ入れを実施すべきではないかとの意見が上がった。

D 改めて、労務単価の推移を少しだけ振り返ってみよう。1990年代終盤から下がり続けていた労務単価は、2013年度の単価改定時に一気に跳ね上がった。当時、国土交通省が「パンドラの箱を開けた」とも表現された社会保険未加入対策の一手として、法定福利費相当額を組み込んだことが大きな要因だった。この事象は、いまでも「ある天才が放った神の手」などと称されている。

B 労務単価はこれまで10年連続の上昇を続けてきたが、事実その上げ幅は鈍化している。24年度からの時間外労働の罰則付き上限規制の適用が迫る中、建設現場における週休2日の定着や働き方改革を踏まえた次なる一手には、政治・行政の力が欠かせない。

C 品確議連の根本匠会長は「政策的な視点を入れた単価でないといけない。例年以上に期待してもらいたい」と言い切った。来週以降の国交相の閣議後会見に注目したい。

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