【BIM/CIM2022③】BIM/CIM原則化の準備広がる 先進発注者の取り組み | 建設通信新聞Digital

4月28日 日曜日

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【BIM/CIM2022③】BIM/CIM原則化の準備広がる 先進発注者の取り組み

 東日本、中日本、西日本のNEXCO3社におけるBIM/CIM導入が活発になってきた。国土交通省の動向を見据えながら、原則適用を準備する動きも出てきた。受注者が率先してBIM/CIMを導入するケースも増えており、受発注者ともに導入機運が高まりを見せている状況。受発注者間の情報共有ではオートデスクのクラウドサービス『BIM360Docs』の活用も進みつつある。NEXCO3社の取り組みを追った。

NEXCO東日本/モデル現場を選定、活用の検討加速

左から山岸課長代理、北川係長、神田課長代理

 NEXCO東日本は、国土交通省のBIM/CIM活用ガイドラインを手引きとしながら、これまで道路詳細設計や連絡等施設詳細設計など23業務でBIM/CIMを進めてきた。

 BIM/CIM活用業務の設計成果では、LandXMLに準じた3次元設計データ交換標準に対応したソフトを求めている。同社の閲覧では、オートデスクのインフラワークスなどを使用している。今後、受発注者双方がデータを共有できるシステムやクラウドの必要性を課題に挙げた。

 BIM/CIMへの理解を深めるため、基礎知識習得のDVDを作成して、設計業務に携わる事務所に配布した。昨年からコロナ禍を踏まえ、基礎知識習得が終わった事務所では、WEB会議システムを駆使したハンズオン(体験学習)を通じて設計・施工段階で何に活用できるかなどの研修を開始した。

3次元設計イメージ図


 ICTのモデル現場を選定し、維持管理段階を含めたBIM/CIM活用の検討を加速させる。これまでは設計など上流側からBIM/CIMの導入を進めてきた。しかし、「維持管理に効率的な活用が見込める」ことから、下流側の維持管理段階からBIM/CIMのアプローチを進める。維持管理に必要な情報を精査し、BIM/CIMを建設段階に反映することを検討している。「建設から維持管理まで一気通貫して携われる道路管理者としての強みを生かす」考えだ。

 BIM/CIMで作成する3次元モデルデータは「維持改良工事で、受発注者双方の施工条件確認や埋設物の見落とし防止に効果がある」という。カルバートボックス、橋梁下部工、トンネルなどの構造物の3次元データを作成し、工事の中で受発注者双方の生産性向上に向けたICT技術の推進、将来の維持管理段階での活用方法、維持管理に何が必要なのかを検討していく。最終的には、スマートメンテナンスハイウェイ(SMH)とICT施工で作成した3次元データを連携する方針だ。

 2021年度から開始した新たな中期経営計画では、スマートデバイスを活用した業務スタイルの変換、新しい働き方改革に適応した環境整備を重点計画の一つに掲げている。具体的には、デジタル技術を導入した工事管理などに取り組む。22年度からは工事現場を見える化し、受発注者双方で現場状況を効率的に共有することを目的に、360度カメラの現場活用を試行する。将来的には、カメラの画像データとBIM/CIMのデータを連係して、工事進捗管理などにつなげる計画だ。


NEXCO中日本/3次元モデルの作成方法を整備

山邉課長代理

 NEXCO中日本は2021年度、3次元CADによる高速道路モデル作成の要領案を整備した。技術本部環境・技術企画部環境・技術企画課の山邉恵太課長代理は「要領案は建設業界団体からの意見を反映してまとめた。22年度から暫定的に運用し、改善していく」との考えを示した。

 昨秋にはBIM/CIMを活用するモデル事務所の指定を拡大した。モデル事務所数の増加に合わせ、今後、3次元CADの研修の回数や人数も増やす方針。情報共有にはオートデスクのクラウドサービス『BIM360Docs』を利用している。

 BIM/CIMの導入により、2次元の図面では難しかった構造物の取り合いを計画段階から3次元で確認できることで、手戻りが減り、現場の生産性が高まっている。3次元データは2次元の資料よりも事業のイメージが分かりやすいため、行政や地域への説明などにも活用している。

 新東名高速道路川西工事など、これまで土工が中心だったBIM/CIMの活用は、その他の工種にも広がっている。4月16日に開通する新東名の伊勢原大山IC~新秦野IC区間の舗装工事では点群データを使って出来形を確認する取り組みを始めている。

 国土交通省は、23年度からすべての発注工事に原則BIM/CIMを導入する。NEXCO中日本は25年度から原則導入する予定。山邉課長代理は「今後は出来形を3次元で描き、点群データと照合して管理することを目指す。出来形管理をデジタル化できれば生産性はさらに向上する。品質の確保を前提に、少しずつ現地で試行していきたい」と語った。

3次元設計データと点群データによる出来形管理


 また、NEXCO中日本は企業・団体などと『イノベーション交流会』を設立し、次世代技術を活用した高速道路マネジメントの実現に向けたプロジェクトを進めている。21年度は「高速道路DXアイデアコンテスト」を初開催する。

 同社が抱える課題の解決につながるアイデアを、交流会会員以外のスタートアップ企業などを対象に5月27日まで募集している。6月の審査会で最優秀賞などを決め、7月に結果を通知する予定。

 募集部門はウェブサービスなどの開発提案を求める「アプリケーション部門」、構想段階のアイデアなどを求める「アイデア部門」の2つに分ける。災害重点対策個所の抽出や応急復旧時の人員・資機材量の推定に活用できる提案や、道路構造物の維持修繕の高度化に寄与するアイデアなどを募る。アプリ部門の最優秀作品は、高速道路での実運用を検討する。


NEXCO西日本/測量業務から始める原則適用

山下主任(左)と徳弘課長代理

 NEXCO西日本のBIM/CIM導入が着実に伸展している。業務では13件、工事では6件のプロジェクトが進行中。建設事業本部建設事業部技術管理課の徳弘哲也課長代理は「社内でも生産性向上の手段としてBIM/CIM活用に前向きな事務所が増えてきた」と明かす。

 業務と工事それぞれで6件のプロジェクトが動く関西支社では、受注者が率先してBIM/CIMに取り組むケースも出てきた。九州支社では契約手続き中も含め6件の業務で導入が進む。四国支社は新規の4車線化事業の検討業務1件で初の導入を決めた。まだ実績がない中国支社だが、導入には前向きという。

 同社は国土交通省のBIM/CIM原則適用が2023年度に迫る中で「その流れに追随していきたい」との方針を持っている。第1弾として22年度から測量業務の3次元化を原則導入することを決めた。徳弘氏は「川上段階から順を追ってBIM/CIMの流れを位置付け、着実に対象範囲を拡大していきたい。次のステップとして設計業務での原則適用も実現したい」と力を込める。

吹田JCT~中国池田IC間における中国道石橋跨線橋のモデルデータ


 測量から3次元化がスタートすることから、今後は新規案件を中心に川上段階からBIM/CIM活用の流れが整う。将来的な導入拡大を見据え、社内体制の構築も並行して力を入れている。もっとも先行する関西支社では受発注者間の情報共有プラットフォームとしてオートデスクのクラウドサービス『BIM360Docs』を既に導入済みだが、これまで50ライセンスにとどめていた契約数を、使用数に制限を設けない契約形態に切り替え、担当者がより積極的に活用できるようにした。

 オートデスクの担当者を講師に招き、社内研修会もスタートした。これまでに計3回を開催し、約50人の社員が受講済み。技術管理課の山下政幸主任は「BIM360の使い方に加え、国交省の動向や国内外の最新事例を通じて発注者として何をすべきか、そのポイントを学んでいる」と説明する。今後も定期的に開催する予定で「発注者としてのBIM/CIM対応力を着実に備えていきたい」と考えている。

 現在、リニューアルが本格化する中国自動車道の吹田JCT~中国池田IC間では経年劣化で橋梁部の損傷が進行しており、通行止めしながらの工事が進行中。ここでは施工者が短期間で集中的に工事を行う必要があり、計画立案や地元との事前協議にBIM/CIMデータを有効活用している。徳弘氏は「関係者間の情報共有は円滑に進み、合意形成の手段としてもBIM/CIMが有効に作用している」と強調する。




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