【BIM/CIM2021⑤】NEXCO西日本 新規事業に合わせ活用広がる | 建設通信新聞Digital

5月3日 金曜日

B・C・I 未来図

【BIM/CIM2021⑤】NEXCO西日本 新規事業に合わせ活用広がる

 東日本、中日本、西日本のNEXCO3社で、BIM/CIMの活用が着実に広がり始めている。各社の取り組みが拡大する中、プロジェクト関係者の情報共有もより密接になり、発注者としてBIM/CIM対応を拡充するための体制づくりも活発化する。3社の取り組みを通し、高速道路事業におけるBIM/CIMの方向性を浮き彫りにする。

山下主任(左)と徳弘課長代理

 NEXCO西日本のBIM/CIM試行プロジェクトが徐々に増加しつつある。先行する関西支社管轄の業務4件、工事5件に加え、九州支社管轄で業務4件が動き出したほか、四国支社も試行への準備を進めている。建設事業部技術管理課の徳弘哲也課長代理は「新規事業に合わせ、川上段階から順を追ってBIM/CIMを活用する流れが広がっている」と説明する。

 BIM/CIM試行に合わせ、受発注者間の情報共有プラットフォームとして関西支社が導入するオートデスクのクラウドサービス『BIM360Docs』は現在50ライセンスを取得する。他の支社でも試行状況を見据えながら導入を検討する計画だ。先行する関西支社では詳細設計付工事としている試行プロジェクトが徐々に施工フェーズに入る。受発注者間で3次元モデルデータの受け渡しが本格化することに伴い、プラットフォームを活用する社員の操作スキルも求められる。

 現在も多くの社員がBIM/CIM試行案件に携わっており、社員の異動に伴う体制変更に合わせ、新規担当者への3次元データ活用講習会も随時開催している。2月にも追加で講習会を実施した。今後は試行案件の進展により、3次元モデルデータの確認作業が増えてくることから「BIM/CIMの試行拡大に並行し、人材育成にも力を入れていく」と強調する。

 試行プロジェクトの阪和道松島高架橋他9橋橋梁更新工事では、BIM/CIMの導入効果として再測量などの手戻りが大幅に減ったほか、レーザ計測の活用で高所作業がなくなり、作業時の転落・墜落リスクもなくなった。中国道吹田JCT~中国池田IC間橋梁更新工事では各種協議に3次元モデルデータをフル活用する計画だ。技術管理課の山下政幸主任は「3次元データの活用は関係者間の合意形成などに効果が期待できるほか、事前の干渉チェックによって施工段階の手戻りも大幅に削減できると実感している」と話す。

松島高架橋工事での活用事例


 企画・調査から設計、施工、維持管理まで一貫して手掛ける高速道路事業では「一貫した3次元データの活用を進める中で、最終的に道路管理にどうつなげるかが重要になり、しっかりとゴール(目的)を見定めたBIM/CIMの運用が大前提になる」と、徳弘氏は焦点を絞り込む。

 同社は今後、施工段階にデータを引き継ぐ試行案件が本格化することから、データ連携のルールも一定の方向性を打ち出すほか、維持管理で使うことを想定し、各フェーズにおけるモデル詳細度(LOD)の検討も進める方針だ。



建設通信新聞電子版購読をご希望の方はこちら