【BIM/CIM2021④】NEXCO中日本 受発注者間のやりとり効率化 | 建設通信新聞Digital

5月2日 木曜日

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【BIM/CIM2021④】NEXCO中日本 受発注者間のやりとり効率化

 東日本、中日本、西日本のNEXCO3社で、BIM/CIMの活用が着実に広がり始めている。各社の取り組みが拡大する中、プロジェクト関係者の情報共有もより密接になり、発注者としてBIM/CIM対応を拡充するための体制づくりも活発化する。3社の取り組みを通し、高速道路事業におけるBIM/CIMの方向性を浮き彫りにする。

山邉課長代理(左)と吉谷課長代理

 東日本、中日本、西日本のNEXCO3社で、BIM/CIMの活用が着実に広がり始めている。各社の取り組みが拡大する中、プロジェクト関係者の情報共有もより密接になり、発注者としてBIM/CIM対応を拡充するための体制づくりも活発化する。3社の取り組みを通し、高速道路事業におけるBIM/CIMの方向性を浮き彫りにする。

 NEXCO中日本は、新東名高速道路川西工事(施工者=清水建設・岩田地崎建設JV)にBIM/CIMを試行導入している。この現場では、ICTをフル活用して工事管理や工事に関する受発注者間のやりとりの効率化に取り組んでいる。施工履歴の3次元データは構造物などの維持管理にも活用する。

 技術・建設本部環境・技術企画部企画・開発課の山邉恵太課長代理は「施工前の検討に3次元データを利用することで施工中の手戻りが減った。地元協議などにも使用しており、従来の2次元資料より事業がイメージしやすく、説明がスムーズに進む」と、その効果を実感している。

 受発注者間の情報共有には、オートデスクのクラウドサービス『BIM360Docs』を試行利用している。山邉課長代理は「3次元化は積算や調達の効率化につながる」と期待を寄せる。その一方、「建設時に得た大容量のデータを、いかに維持管理に引き継ぐかが課題。これから技術的な仕様を定め、蓄積したデータを効率良く保全に活用していきたい」と語る。今後は建設業団体との連携を強化し、多くの企業にBIM/CIMのメリットを周知するとともに、3次元データを扱える人材の育成に注力する。

i-MOVEMENTプロジェクトにおける3次元化の方向性(各種点検などによって得られた変状データは、座標値を持つことによって、3次元化のまま保存・蓄積。構造物等の立体的な保全管理を実現する)


 またNEXCO中日本は、次世代技術を活用した革新的な高速道路保全マネジメントを実現するプロジェクト『i-MOVEMENT』(アイムーブメント)に取り組んでいる。保全企画本部次世代保全推進課の吉谷直人課長代理によると「交通、点検、工事、気象など、各種データと3次元データを位置情報で統合し、サイバー空間で表現する管理基盤(デジタルツイン)の構築を進めている」

 将来は3次元データを活用し、交通量や気象条件による劣化要因を分析、予測し、維持修繕計画の策定を目指す。現在、人が行っている路面清掃を機械化するなど、高速道路の保全作業の省人化も図る。また、AI(人工知能)を使い渋滞予測の算出速度を上げ、カメラで全線を監視して車線ごとの混雑状況を把握し、その情報をリアルタイムに提供して渋滞削減や利用者の安全確保などにつなげる。このように、各種データから高速道路上のオペレーションの最適化を図ることを目指している。19年7月に企業や大学などと設立した「イノベーション交流会」では、業務の課題解決に向け、既にさまざまな技術実証を進めている。この中には時速80㎞で走行する車両に搭載したカメラでトンネル覆工の点群データを取得し、精緻な経年変化を把握する技術(技術保有企業=三菱電機)がある。実証の結果、この技術は業務への導入効果が得られると判断したため、実用段階に移行している。



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