空間捉え統合的マネジメント/道路陥没対策 第2ステージの議論開始/5月めどに提言/国交省 | 建設通信新聞Digital

5月2日 金曜日

行政

空間捉え統合的マネジメント/道路陥没対策 第2ステージの議論開始/5月めどに提言/国交省

 国土交通省は、埼玉県八潮市の道路陥没事故などを契機とする今後の対策立案に向け、第2ステージの議論に入った。道路管理者などとのリスク情報の共有や、下水道と水道の点検、維持・修繕・改築・再構築の在り方などを検討する。下水道の全国特別重点調査を打ち出した第1次提言に続く形で、5月をめどに第2次提言をまとめる。有識者検討委員長の家田仁政策研究大学院大学特別教授は「下水道や水道をそれぞれマネジメントするのではなく、同じ空間にある道路なども一体的に捉える必要がある。もっと統合的なマネジメントに一歩踏み込むという新しいステージに来ている」と指摘した。 国交省は26日、「下水道等に起因する大規模な道路陥没事故を踏まえた対策検討委員会」の第4回を開いた=写真。2次提言には、事故発生時の対応も位置付ける。その後もさらに議論を重ね、夏ごろに第3次提言をまとめる見通し。そこでは地方自治体によるインフラ管理の在り方などにも言及することになりそうだ。
 今回の論点の一つが、下水道以外の地下占用事業者らとの連携で、家田委員長は「同じ空間を管理している主体で情報共有することが重要」と話した。国交省によると、八潮市の事故を受け、各都道府県に設置している道路メンテナンス会議の下部組織として「地下占用物連絡会議」を既に設置済み。さらに今後、直轄国道で義務化している占用物の管理状況報告を都道府県、市区町村にも広めるための仕組みを検討する。直轄同様の取り組み実施は現状、都道府県で約6割、市区町村では約2割にとどまっている。
 今回の会合では、下水道管路の点検、下水道施設の維持・修繕・改築・再構築の現状と課題について多くの時間を割いた。下水道管路に関しては、これまで管路内部を主に点検してきたが、その外側にある地盤や地下水位の状況を十分に把握できていないといった問題意識を共有した。
 その上で、重点点検の対象、頻度、手法・技術などに関する論点を提示した。優先度の見極めに当たり、下水道施設の各種条件や周辺地盤の状況、社会的影響の度合いを総合的に判断すべきか、異常が確認され未対応の箇所は点検頻度を増やすべきかといった視点で検討を重ねる。
 下水道の維持・修繕・改築・再構築については、維持管理のしやすさやリダンダンシー(代替性)の観点も含めて最適解を探る。マンホールの最適配置、腐食しにくい構造・材質、幹線の複線化・ネットワーク化、大口径・高水位管内へのモニタリング技術の導入、人口減少を見据えた分散型システムの導入などがテーマとなる。
 委員からは「中小の自治体を支援する仕組みが必要ではないか」「深い場所の空洞調査は技術開発が途上にあり、国としてどう支援していくか」といった意見が出たという。
 水道管の管理の現状と課題というテーマも俎上(そじょう)に載った。水道管は、老朽化が進行している一方で更新が進んでいない。全国の水道管路総延長は約74万㎞で、このうち法定耐用年数の40年を経過した管路は約17万㎞(全体構成比=約22%)、30年経過が約30万㎞(約41%)、20年経過が約49万㎞(約66%)となっている。水道管は口径300mm未満が全体の9割以上、ダクタイル鋳鉄管製が半数以上を占める。法定耐用年数を超えた管路を今後20年で更新する場合、毎年の更新延長は約8800㎞に上る。
 また、埋設管路の目視点検は困難なため、音聴などによる漏水調査を行っているが、専門的人材の育成・確保が課題になっている。絶対数は少ないものの、漏水事故が起こった場合に大規模断水の恐れがある大口径管は技術的に漏水調査が難しいという。埋設物が集中する箇所や軌道下など、施工困難箇所に老朽管が残されている可能性もある。
 現在、地域インフラ群再生戦略マネジメント(群マネ)の取り組みが各地で進展しつつある中、家田委員長は「縦・横、上・下のさまざまなインフラをこれまでは別々に管理してきた。それが楽だからだが、そこにはいろいろな矛盾がある」と指摘し、群マネの深化にも意欲を示した。