そこが聞きたい・安藤ハザマ常務執行役員土木事業本部長/宮川 隆太郎氏 | 建設通信新聞Digital

6月16日 月曜日

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そこが聞きたい・安藤ハザマ常務執行役員土木事業本部長/宮川 隆太郎氏

【今後の戦略は?/脱炭素関連分野を強化】

 安藤ハザマの業績が好調に推移している。2025年3月期決算では、連結の売上高、純利益などが13年の合併以来、過去最高を更新。こうした好機を捉え、4月には組織改編にも踏み切った。新設された土木事業本部の本部長を務める宮川隆太郎常務執行役員は「土木事業の成長が、会社全体の事業量・収益の安定につながる。私自身が先頭に立って、その実現に取り組む」と決意を語る。今後の戦略などについて話を聞いた。 同社は4月1日付で営業本部、建設本部を「土木事業本部」「建築事業本部」「エネルギー事業本部」に改編。現行の機能別の本部体制を事業別の本部体制に改編し、一貫した責任体制の下、多様化する社会・顧客ニーズに的確、迅速かつ柔軟に対応する体制を整えた。
 宮川氏は「土木と建築が一体となって取り組んできたことで、多くの成果があった」と振り返る。全社的なDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進や、両事業が互いの強みを生かし、弱みを補完し合う体制づくりなどがその一例だ。ただ、工種や現場マネジメント手法、顧客層の違いから課題もあったとし、従来の成果を生かしながら「営工一体の体制とした」と説明する。
 業績をけん引しているのは建築事業だ。一方で土木事業については、「公共事業そのものは減っていないが、物価高騰の影響で将来的には案件数の減少が想定される」と見通し、「建築事業が好調な今こそ、土木事業をさらに成長させなければならない」と見識を示す。
 戦略の柱の一つが、脱炭素関連分野の強化だ。「例えば鉄鋼メーカーでは、高炉から電炉への転換が課題になっている。そうした設備更新などに、われわれが貢献できる部分は大きい。ある程度のシェアを持っている電力会社の新しい領域についても力を発揮したい」と語り、発注者の期待に応える組織づくりを通じて、事業拡大を目指す。
 一方、課題もある。筆頭に挙げるのが担い手不足だ。「人手の数が事業量を左右する。まずは人員を増やしたい」との考えを明かす。「このままでは10年後にはにっちもさっちもいかなくなる」と危機感をにじませ、持続的な体制づくりを進める。
 人員確保と並行して進めるのが、生産性向上だ。国土交通省が掲げる「i-Construction2.0」を念頭に、「ICT技術の活用によって省力化を図り、併せて施工の機械化も進めていく」と話す。最終的には無人化を視野に入れ、「現場と技術開発部門が一体となって取り組むことに意義がある」と強調する。
 管理高度化に向けた取り組みでは、誰もがいつでもアクセスできる、各工事の情報が一元化されたシステムの構築を現在進めているという。
 自身の豊富な現場経験を踏まえ、「建設業界の待遇改善が最大の目標だ」と力を込める。「これから建設業を志す人たちが、『この業界に入りたい』と思えるような会社づくりをしていきたい」と語り、未来の担い手へ希望をつなぐ。

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 (みやがわ りゅうたろう)1991年3月東大農学部農業工学科卒後、同年4月間組(現安藤ハザマ)入社。2016年12月東北支店土木部長、19年4月建設本部建設統括部副部長、20年4月建設本部建設統括部長、21年4月東北支店副支店長、22年4月執行役員、23年4月東北支店長を経て4月から現職。趣味はゴルフ。思い出に残る仕事は、堤体積約120万m3ある長井ダム(山形県)の施工。「人の話をよく聞く」がモットー。福岡県出身。65年3月22日生まれ、60歳。

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