「BIM確認申請の始まりが、日本の新たな一歩であることを認識してほしい」。グローバルBIMの矢嶋和美社長は2026年春からの図面審査は「序章」であり、29年春から始まるIFCデータ審査の枠組みに対して「きちんと備えなければいけない」と警告を鳴らす。矢嶋氏は国際組織ビルディング・スマート・インターナショナル(bSI)のボードメンバー7人のうちの1人でもあり、同社はbSIが提唱するopenBIMに準拠したプラットフォーム『Catenda Hub』を提供するCatendaと、建設ワークフロー最適化ツール『OpenAEC』を展開するONESTRUCTIONと連携し、BIM確認申請への対応に乗り出すことを決めた。
BIMソフトから出力したIFCデータを円滑に審査するためには、bSIが規定する「IDS」と「bSDD」という技術標準へのシステム的な対応が求められる。IDSはIFCデータの中の情報レベルを定義して建築基準に基づくデータの仕様を機械的に確認するもので、bSDDは建築を定義する用語やルールをまとめたウエブ上の辞書的なサービスとなる。この2つをセットで使うことで、IFCデータ審査時の情報の齟齬が解消され、確認作業の効率化が実現する。
既にBIM確認申請に乗り出すシンガポールやドバイなどでは、IFCデータを円滑に審査する手段として、IDSとbSDDをセットにしたシステムが運用されている。国土交通省がIFCデータ審査に乗り出すことで、bSIの提唱するopenBIMの流れが、日本に到来しようとしている。「IFCデータだけでは何もできない。IDSとbSDDへの対応がなければデータ審査は成立しない」と矢嶋氏は力説する。
3社は、豊富なBIMコンサルティング実績を誇るグローバルBIMが軸になり、CDE(共通データ環境)プラットフォームのCatenda Hub上で年5万プロジェクトを運用するCatendaと、OpenAECのラインアップとしてIDSとbSDDの自動データ入力プラグインを提供するONESTRUCTIONがシステム連携にすることで、IFCデータ審査の流れをリードしていくことを目指している。
連携を指揮する矢嶋氏は「われわれがどういう形で確認申請を下支えするか、現時点でまだ具体の方向性は定めていない。3社それぞれで可能性を考慮しながら、いくつかの選択肢の中から最適なビジネススキームを確立していく」と明かす。
例えばグローバルBIMでは「IFC基準に準拠しているかを事前にチェックしてほしいとの相談が相当数あるだろう」と見通しており、ONESTRUCTIONの宮内芳維CTOは「半年以内にCatenda HubとOpenAECのシステム連携を整え、グローバルBIMが導入支援するBIMプロジェクトの中でシステムの検証を重ねていく」と強調する。IDSの定義設定やbSDDの進め方などを確立し、IFCデータ審査時の自動化効果なども数値化する方針で「早ければ26年にもパッケージを提供できれば」と考えている。
bSIでは10年前に技術標準としてbSDDが位置づけられた。それを先導してきたCatendaのホーバル・ベルCSOは「長年、bSDDの活用を呼び掛けてきただけに、ONESTRUCTIONが自動プラグインを実装したことは、私にとっても、日本にとっても大きな分岐点になる」と強調する。今後、Catenda HubのCDEプラットフォーム上でOpenAECとの相互データ連携が実現すれば「IFCデータ審査時にはそれぞれが相互に補完し合う密接な関係性が実現する」と手応えを口にする。
3氏は「IFCデータ審査がもたらすインパクトの大きさを理解してほしい」と口を揃える。宮内氏は「情報要件を基軸にしたBIMの定着」、ベル氏は「日本におけるopenBIMワークフローの確立」、矢嶋氏は「新たな潮流の周知」を推進する。IFCデータ審査に向けた3社の歩みは日本のBIMステージを引き上げる原動力となることを目指している。