フィーチャーインタビュー2025・三協立山三協アルミ社 豊岡 史郎社長 | 建設通信新聞Digital

9月6日 土曜日

インタビュー

フィーチャーインタビュー2025・三協立山三協アルミ社 豊岡 史郎社長

【領域拡大で市況変化に対応/リフォーム、防災分野にチャンス】

 2025年5月期決算における建材事業は、売上高・営業利益とも前年同期比を割り込んだ。「事業環境は厳しい」と口にする。24年度の住宅着工戸数は3年ぶりに増加に転じたが、国内人口が減り続ける中、長期的な減少トレンドは避けられない。商品品質の向上、事業対象領域の拡大で市況の変化に対応する。  --足元の市場環境は
 「住宅分野では改正建築基準法、改正建築物省エネ法が4月に施行された。小規模建築物の審査省略制度などが縮小され、住宅を含む全ての建築物に省エネ基準への適合が義務付けられた。これを避けようと、24年度は法改正前の駆け込み需要があった」
 「一方で、建築資材や人件費をはじめ、建設コストが高止まりしている。当社の製品原材料で最も割合が大きいアルミ地金価格も、下がる気配がない」
  --事業戦略は
 「リフォーム需要は伸びている。カーボンニュートラルの実現に向けた断熱・遮熱需要も高い。防災分野では耐浸水商品などのニーズも多い。こうした新たな需要にビジネスチャンスがある。省エネ・創エネ分野では、ペロブスカイト太陽電池を建材に組み合わせた商品も検討している」
 「従来提供してきた窓、手すり、カーポートといった製品とは別の、新しいラインアップの展開も進めたい。現在、アイデアを出している最中であり、少しずつ事業領域を広めていく」
 「日本の人口は減少しているが、一方で高齢者は増えてくる。バリアフリーをはじめ、高齢者のニーズをくみ取った使いやすい製品開発も必要だ」
  --注力していることは
 「住宅向けのアルミ樹脂複合サッシの基幹商品を全面改定し、新たな窓シリーズ『STINA(エスティナ)』を発売する。8月に断熱等級6に対応する木造住宅向け製品、9月には非木造の集合住宅の改修向け製品を発売する。さらに同シリーズで木造住宅向けの普及タイプや新築ビル向け製品も展開する予定だ。製造に当たっては、住宅用・ビル用で製造ラインを分けず、同じラインでつくり、生産効率を高める」
  --長期的な展望は
 「国内の市場規模は縮小するだろう。ただ、中身は濃くなり、製品一つひとつに求められる性能は高まってくるはずだ。昨今では、大型の木造建築が増えている。多様化するニーズをうまく取り込むことが大切だ。事業領域を広げるとともに変化する市場に合わせ、ビジネスモデルも変え、新たな価値や商品を提供していきたい」

 (とよおか・ふみろう)髪の寝癖直しも兼ねて、目覚めの朝風呂に入るのが日課。行きつけの理髪店に毛の量が多いといつも言われる。「もう還暦だが、いまだに水をかけないと寝癖が直らない」と笑う。