連載・災害に立ち向かう・国土強靱化(2) | 建設通信新聞Digital

8月1日 金曜日

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連載・災害に立ち向かう・国土強靱化(2)

落石で全面通行止めの国道220号(24年8月の日向灘地震)(提供:九州地方整備局宮崎河川国道事務所)
【対策進展で被害軽減/取り組みはまだ不十分】
 3か年緊急対策、5か年加速化対策とこれまでの国土強靱化施策により各地で着実に対策が進んだ。豪雨災害を中心に、近年自然災害が頻発している九州地方の事例から国土強靱化施策の効果をひも解く。
 2016年4月の熊本地震、17年7月の九州北部豪雨、18年7月豪雨、19年8月豪雨、20年7月豪雨など、九州地方は10年代後半から自然災害が頻発・激甚化している。
 西日本の広範囲に河川の氾濫や土砂災害が発生した18年度は、3か年緊急対策による集中的なインフラ対策が始まった年でもある。緊急対策の効果はすぐに表れ、鹿児島県内を流れる川内川の河道掘削と鶴田ダムの事前放流で19年7月豪雨による国管理区間の内水被害を大幅に軽減。伊佐市で約3mの水位低減効果があった。
 九州南部を中心に観測史上最も多い雨量を記録し、球磨川の大規模な氾濫で流域の市街地や集落に壊滅的な被害を与えた20年7月豪雨は治水の在り方を変える大きな転換点となった。この頃から流域全体であらゆる関係者が協力して水害を軽減させる流域治水がスタートした。
 17年の九州北部豪雨以降、8年間で全国最多となる6回の大雨特別警報が発表された福岡県は、事前防災対策の河道掘削や堤防、配水場などの整備を加速化させている。
 久留米市の筑後川水系金丸川・池町川では、地下調節池や放水路などを整備する浸水対策事業を20年度に着手。21年度からの5か年加速化対策の国土強靱化予算の投入で25年度に事業完了する見通しが立った。
 大分県では、安定した予算措置により中津日田道路の耶馬溪道路や三光本耶馬渓道路などの整備が加速した。再度災害防止対策となる津久見川などの河川改修も進み、砂防施設は17年と比較して事業箇所数が約2倍に増えた。広域防災拠点の大分スポーツ公園の老朽化対策やダムのメンテナンスも整備計画を前倒ししている。
 宮崎県では、ミッシングリンク解消を目的とした道路新設や暫定2車線区間の4車線化が進んだ。24年8月の日向灘地震による落石で国道220号が全面通行止めになった際には、23年3月に開通した東九州自動車道路(清武南IC~日南北郷IC)が代替路の役割を果たした。耳川では強靱化予算を活用し、河道掘削や宅地かさ上げ、築堤などの河川整備を集中的に実施している。
 宮崎県県土整備部の担当者は「これでもまだ十分ではない」と口にする。なぜなら国道218号の橋梁の耐震化が進んでいないからだ。この路線は、南海トラフ地震発生時に九州東側沿岸に向けて一斉に進行して道路啓開する九州道路啓開計画「九州東進作戦」の要であり、橋梁が被災すると復旧に多くの時間を要することを懸念している。
 担当者は第1次国土強靱化実施中期計画に盛り込まれた施策の一つ「道路橋梁などの耐震機能強化」に触れ、「強靱化予算を確保して橋梁が多い延岡市から高千穂町までの区間の耐震補強を推進したい」と期待をのぞかせる。