連載・災害に立ち向かう・国土強靱化(1) | 建設通信新聞Digital

7月31日 木曜日

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連載・災害に立ち向かう・国土強靱化(1)

【実施中期計画 着実に推進/建設業の存在が今後も頼りに】
 猛烈な豪雨や巨大地震など自然災害の脅威が高まっている。迫り来る自然災害に立ち向かうため、政府は6月に第1次国土強靱化実施中期計画を決定。今後5年間、同計画に沿ってハード・ソフト両面の対策を集中的に実施する。将来にわたって安全な国土をつくるためには何が求められるのか。坂井学国土強靱化担当相や識者へのインタビュー、地域建設業の声を交えながら展望する。 坂井担当相は、自然災害に強い国土形成に向けて第1次国土強靱化実施中期計画を着実に推進する決意を示し、「地方自治体とも力を合わせて災害に屈しない強靱な国土づくりに取り組んでいく」と力を込める。
 実施中期計画では計画期間内に行う施策に326施策、このうち推進が特に必要な施策として114施策を定めた。「必要な施策を網羅的かつメリハリをつけて盛り込んだ。埼玉県八潮市の道路陥没事故を踏まえた対策など、直近の事案もタイムリーに反映している」と説明する。
 リスク集中回避のための自立分散や、平時と災害時を区別しないフェーズフリーの概念を取り入れた点なども特徴に挙げた上で、「国民の意見も参考にしてできた計画だが、つくっただけでは意味がない。計画に沿った強靱な国土づくりに取り組んでいく」と強調する。
 計画に定めた施策を着実に進めるため、今後の社会経済情勢に応じた必要予算の確保が重要になると指摘する。「物価や人件費が上がると当初想定していた工事量がこなせない可能性が出てくるため、事業量をしっかりと確保したい」。計画に明記した5か年20兆円強の事業規模をベースに「高騰分の影響を毎年度の予算編成過程で適切に反映するとともに、災害の発生や事業の進捗(しんちょく)についても機動的・弾力的に対応していく」考えを改めて示す。
 これまで進めてきた国土強靱化施策は、自然災害の被害の最小化と安全・安心の確保に確実に寄与している。「知事からは国土強靱化施策で整備した堤防や砂防ダムなどが役に立ったという話を聞く。3か年緊急対策や5カ年加速化対策で取り組んだ施策が各地域で効果を上げている」と実感を込める。
 「気候変動に伴い自然災害が激甚化・頻発化している。南海トラフ地震や首都直下地震などの巨大地震も切迫する中、国土強靱化は引き続き待ったなしの状況にある」と認識する。国民の生命・財産を守り続けるため、「事前の備えの大部分を占める国土強靱化をしっかりと推進していく」と意気込む。
 国土強靱化や災害対応の最前線に立つ建設産業の役割に引き続き大きな期待を寄せる。「災害時は道路啓開をはじめ、真っ先に駆け付ける大切な役目を担っている。各地域で建設業に活躍してもらうことが今後も重要になる」と見据える。
 担い手確保が喫緊の課題となる中、生産性向上を目指して進展する新技術の導入などを念頭に置きながら、「各現場の努力が結実することで、建設業がいざという時に頼りになる存在であり続けてほしい」と展望する。