連載・災害に立ち向かう・国土強靱化(4) | 建設通信新聞Digital

8月4日 月曜日

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連載・災害に立ち向かう・国土強靱化(4)

小林名誉教授
【「防災の主流化」実現を/複数主体の官民連携が要】
 国土強靱化推進会議の議長を務める小林潔司京大名誉教授は、第1次国土強靱化実施中期計画を推進して「防災の主流化」を実現するよう唱える。官民で認識を一致させて取り組む上でも実施中期計画は核になると期待を込める。
 国土強靱化基本法の改正により2023年7月に設置された同会議では、5か年加速化対策の評価や計画内容に関して意見を交わしてきた。実施中期計画が法定計画として「将来にも続く仕組みとなった」ことに意義があると強調する。
 「実施中期計画は科学技術と行政が長期的な連携を築くための大きな柱となる」。自然災害の持つ不確実性を乗り越えるため、科学技術のさらなる進展とともに、その成果を国土強靱化施策に反映させる必要性を指摘する。
 実施中期計画の施策を進め、官民の連携を促進しながら「防災の主流化を実現していく必要がある」と力を込める。特に複数の主体同士による官民連携を実現させることが求められるとし、国土交通省が進める地域インフラ群再生戦略マネジメントなどを好事例に挙げる。
 「これまで官民連携は行政と民間の1対1の連携で考えられていたが、複数の行政と複数の民間の連携に対応していかなければならない」と説く。その実現に向けては「複数の行政、複数の民間の連携を調整するプラットフォームの構築が必要になる」と提言する。
 地域建設業がインフラ整備や災害対応といった役割を果たし続けるためにも連携や協業化の視点が鍵になるという。「地域建設業が疲弊すると災害の復旧・復興に多大な時間がかかってしまう。地域を下支えする建設業をどう維持していくかが今後も大きな課題になる」との認識を示す。
 実施中期計画では「地域防災力の強化」が柱の一つに位置付けられた。災害時の広域連携体制の強化を志向する中、「災害対応は自治体やさまざまなコミュニティー、NGO(非政府組織)・NPO、あるいは組織化されていない社会的なつながりによる活動で成り立っている。実施中期計画で地域の各主体が円滑に動くための土壌が整備されるだろう」と期待を込める。
 今後、同会議では実施中期計画に定めたKPI(重要業績指標)に基づき、施策の進捗(しんちょく)管理に当たっていく。「KPIが設定されていない施策でも必要な施策はある。体制整備や技術開発などに時間を要する施策もあるため、推進会議でモニタリングをしながら次の実施中期計画に向けた議論を続けていく」。流域治水に代表されるような施策間の連携も引き続き重要性を増すとみている。
 自然災害の威力が高まり、想定外といえる被害が発生している。直近の能登半島地震を見ても、海岸の隆起や高盛り土の崩落など、これまでに見られなかったような大きな被害が発生した。「われわれは自然災害を理解してきたつもりだが、まだ分からないことは多い。自然災害に対して謙虚な姿勢を取り続けていかなければならない」と呼び掛ける。
 (おわり・川合秀也、今野英司、中川慎也、船越卓、谷戸雄紀、山口浩平)