2030年に創業100年を迎えるタカヤ(盛岡市)が、成長戦略の一つとしてDX(デジタルトランスフォーメーション)推進を打ち出したのは今年1月のことだ。同社の細屋伸央社長は「人が足りないから、できない」という意識からの脱却を目指し、全事業部を対象とした建設DXの積極導入にかじを切った。7月には各部門から計35人を選抜したDX推進チームを発足し、力強い一歩を踏み出した。
DX推進の流れと連動するように、BIM導入のステージは施工段階へと踏み込む。伊藤慎吾建築事業部工務本部建築設計グループマネージャーは「BIMのロードマップをDX推進の流れに沿って発展させていく。設計段階で構築したBIMデータを、いかに施工段階で利活用するか。そのスキームを確立することが何よりも重要になる」と説明する。
社内の標準ツールに位置付けるオートデスクのBIMソフト『Revit』には、専門性の高いアドインツールが数多く提供されている。施工段階へのBIMデータ活用を検証する役割として、4月からBIM推進室のメンバーとなった建築事業部東京建築部の千葉渉氏は「Revitデータを利活用するためのアドインツールを実際の施工現場で積極的に検証し、より最適なツールを定着させていきたい」と強調する。
施工段階への導入検証は、1年ほど前から取り組んできた。BIM推進室のまとめ役を担う安東由吏江建築設計グループ主任は「現場にデータを渡すだけでは活用が進まない。施工で活用するためのデータ整備をどこまでわれわれ推進役が進め、どこから現場に担ってもらうか、役割分担をきちんと決めることが大切」と語る。社を挙げてDX推進が動き出すことで「設計から施工まで一貫した生産プロセスを通じてデータ構築の流れをきちんと検証できる」と力を込める。
これまでのBIM導入ステージでは、BIMモデルから図面を出力する部分に力を注いできた。伊藤氏は「図面化ではなく、蓄積したデータを活用して業務を改善していくことが、われわれが目指すBIM導入の目的であり、それによってデータ活用の価値が生まれる」と考えている。根底にはBIMコンサルティング会社のSEEZ(東京都港区)からの助言がある。高橋朋彦建築設計グループ業務推進グループ課長は「われわれBIM推進メンバーの意識は大きく変わり、BIM導入の価値を常に念頭に置くようになった」と振り返る。
社内では、26年春から動き出す確認申請のBIM図面審査に向けたテンプレート整備とともに、モデラーへの教育もスタートした。17年からBIMに先行して取り組んできた設計グループでは「もうCADに戻ることはできない」との声が広がっている。Revitを日頃の業務ツールとして円滑に使えるようになったことで、モデリングに合わせて図面の整合性が整うことが設計作業の効率化につながっている。
情報共有の流れも、オートデスクの建設クラウドプラットフォーム『Autodesk Construction Cloud(ACC)』を導入したことで格段に向上した。安東氏は「これからは設計や提案活動に加え、施工等にも積極的にBIMデータを活用する流れになる。データを共有する関係者が増える中で、ACCを軸に同時並行で作業を進めていくことが、BIM導入の価値につながっていく」と実感している。