【BIM2021】安藤ハザマ 先駆者増える好循環の流れ | 建設通信新聞Digital

4月28日 日曜日

B・C・I 未来図

【BIM2021】安藤ハザマ 先駆者増える好循環の流れ

 安藤ハザマのBIM導入が新たなステージに入った。推進母体だったBIMセンターを発展解消し、設計から施工へのデータ連携を担っていた生産設計室を部に昇格させ、BIM推進の中心的な役割に位置付けた。生産設計部の斉藤正和部長は「現業が主体的に取り組む流れに切り替え、各部門で旧BIMセンターのキーマンがBIMを拡散する流れをつくる」と強調する。

 従来は、旧BIMセンター14人、旧生産設計室12人の計26人体制で推進してきた。これからは生産設計部を40人弱の体制に拡充し、さらに旧BIMセンターの担当者を建築技術統括部、プロジェクト推進部、建設監理部などに配置し、各部門の推進役として機能させる。

 同社は工事費10億円以上のプロジェクトにBIMを導入しており、年間を通じて約30件が稼働している。「BIMの進展には現業の定着が不可欠であり、実現できれば部分最適の枠組みを全体最適へと、ステージをひとつ上げられる」と考えている。設計から施工にデータをつなぐ一気通貫の流れを形づくるとともに、維持管理段階へのデータ活用も視野に入れている。

 国土交通省の2020年度BIM推進会議連携事業に採択された自社の社員寮新築プロジェクトでは、設計から施工、維持管理までの各プロセスでBIMを一貫して活用する流れを検証中。5月に竣工を迎え、これからは維持管理段階でのデータ活用フェーズに移行する。「このスキームを検証する中で、自社としてのBIM推進の方向性も固めてきた。その成果が新体制へとつながっている」と明かす。

国交省連携事業の社員寮新築プロジェクト


 建築技術統括部でBIM推進のコントロール役を担う吉田日都士担当部長は、フロントローディング型BIMワークフローに基づき、業務フローの改善を指揮する推進役の1人だ。BIM活用マニュアルやライブラリを拡充するとともに、データ連携の全体最適化スキームも整える。「当社のBIM成熟度はレベル2でまだ部分最適の段階にあるが、25年度までには建物ライフサイクルを通してBIMを運用する全体最適の枠組みを確立し、レベル3の到達を目指す」と力を込める。

 プロジェクト推進部でBIM推進役を務める田中洋介課長は、設計から積算部分のデータ連携で下支え役を担う。ここでは構造設計部門が使うBIMソフト『Revit』のデータを積算業務に連携するため、カルテック(大阪市)の鉄骨積算ソフト『すけるTON for Revit』をフル活用している。詳細部材を構造モデル上に自動生成できるため「構造プランや施工方法の検証ツールとしても効果を発揮している」と説明する。

『すけるTON for Revit』でのハイブリッド数量仕分け


 構造設計と鉄骨積算のデータ連携実績は、20年度に30プロジェクト50棟にも達した。近年はS造とRC造のハイブリッド構造が増加傾向にあり、対応物件の半分程度を占める。『すけるTON for Revit』の最新版では3次元表示の色分け対応などハイブリッド構造向け機能が強化され、より使い勝手が増した。「自由に3次元部品を作成、配置できるようになったのも大きい」と考えている。

 積算部門では、各支店の構造系社員からエリア代表のBIMキーマン1人を任命し、計7人の体制を確立してきたが、この1年間でBIM対応物件の経験者が増え、対象者も倍増している。今後は『すけるTON for Revit』を設計、積算、調達の各部門が連携し合うためのコミュニケーションツールとしても位置付ける。他社設計案件では構造計算データを連携させる試みも今後拡充していく予定である。

 斉藤部長は「このように成功体験を経てBIMの先駆者が増える好循環こそがBIM推進の組織力になる」と確信している。建設監理部にBIM担当を置いたことも、施工BIMの進展に向けた「大きな一歩」だ。BIMセンターの発展解消によって「各部門が自分事としてBIMと向き合う」流れが強まるとともに、各部門のキーマンを介して「実務的な細かな課題が出ている」と身構えている。

 その先に見据えるのは「DX(デジタルトランスフォーメーション)化を念頭に、データベースとしてBIMを生かす仕組みも構築する」(吉田担当部長)流れだ。BIMを機軸に蓄積したデータは様々なソリューションへとつながり、生産性向上だけでなく、新ビジネス領域への糸口にもなる。同社では将来を見据えた生産改革が動き出そうとしている。



建設通信新聞電子版購読をご希望の方はこちら