【BIM2021】コイズミ照明 製品データ提供から照明コンサルへ | 建設通信新聞Digital

4月29日 月曜日

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【BIM2021】コイズミ照明 製品データ提供から照明コンサルへ

 コイズミ照明が、製品のBIMデータ提供に乗り出して1年2カ月が経過した。当初720製品からスタートした公開データ数は現時点で約6300アイテムを超えるまでに拡充。実プロジェクトにおけるBIMデータ提供の効果も徐々に見え始めてきた。橿棒直紀取締役首都圏市場開発統括部長は「BIM対応をきっかけとして、施主との新たな関係性が生まれつつある」と手応えを口にする。

 ある大手外食チェーンからは、照明モデルの標準化づくりに参加を求められた。多店舗展開における設計作業の効率化に向け、店舗の標準BIMモデルを構築する一環として、照明部分についての標準モデル化サポートを依頼された。製品データのパラメーターを再調整するほか、レンダリング時における照明再現性についても協働で検証してきた。外食チェーンの設計担当者からは「照明計画の最適化ツールとして有効利用できる」と一定の評価も得た。

 そもそもコイズミ照明では、製品のBIMデータ提供によって「光空間づくりを通して、設計者や施工者の生産性向上に貢献したい」との思いがあった。そこで早い段階から照度検証など空間シミュレーションを担うきっかけとして、BIM対応力の強化に乗り出してきた。その一翼を担う組織として、コンサルティング機能を行う照明設計部門LCR(ライティング・クリエイティブ・ルーム)を中心に、より川上段階から照明計画づくりに参入する体制も構築してきた。LCRは全国をカバーし、照明コンサルティング依頼を一手に引き受け、確度の高い光環境をデザインしている。

 橿棒取締役は「今回、外食チェーンと取り組んだBIM標準モデル構築のノウハウを、他の建物用途にも積極的に展開していきたい」と考えている。より川上段階からプロジェクトに参加できれば、照明メーカーとして「より良い空間づくりに貢献できる」からだ。製品BIMデータのホームページへの公開効果もあり、BIMをきっかけとしたプロジェクトの参加依頼も増えている。

 大阪市内で2020年10月に竣工した三栄建設鉄構事業本部新事務所は、ボロノイ分割という幾何学で構成した複雑な空間で、設計・施工を手掛けた竹中工務店が本格的なオープンBIMに取り組み、照明設計を担当したコイズミ照明にとっては初のBIM連携プロジェクトになった。設計当時はまだ製品BIMデータの提供を検討していた段階でもあった。担当したLCR所属の照明デザイナー河野昂太郎氏は「いまにつながる当社の先導的なBIMプロジェクト事例になった」と振り返る。

三栄建設鉄構事業本部新事務所のエントランス


 竹中工務店から提供された建物のBIMモデルデータを使い、照明計画を検証してきた。これまでも設計段階から照明計画を担うケースはあるものの、簡易的な空間モデルを設定し、配置計画などを中心に検討してきたが、ここではBIMモデルを基に複雑な建物空間の中で、念入りな検証ができた。「部屋単体でなく、建物一体としての空間検証が実現した初めてのケースでもある。今後、BIMプロジェクトに参加する機会が増えれば、季節や時間の変化に応じた制御のオペレーションや運用時まで想定した照明計画に踏み込める」と先を見据えている。

吹き抜け空間


 設計者や施工者のBIM導入が急速に進展する中で、橿棒取締役は「われわれ照明メーカーとしての役割も大きく変化するだろう」と見通している。建設業界でフロントローディングの流れが鮮明になれば、生産プロセスは前倒しされ、照明メーカーが設計段階から参加し、空間検証の一翼を担う機会が増えてくる。製品のBIMデータ提供をきっかけに「われわれ自身もBIMの新たなステージへと進んでいく」と訴える。

 「ファーストコール・カンパニー」を旗印に川上段階への営業強化を推し進めているコイズミ照明にとって、BIMデータ提供は川上領域参入のきっかけづくりになる。「当社は製品づくりで培った照明の知見を提供することで、建築主を始めプロジェクト関係者ともに良質な建築を作りたいとの思いがあり、その手段としてBIMを位置付けている」と力を込める。BIM対応が同業他社との差別化戦略となり、業界の中でも一歩先を走り始めた。



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