【BIM2022】コイズミ照明/設計者、施工者と共創する流れに | 建設通信新聞Digital

5月3日 金曜日

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【BIM2022】コイズミ照明/設計者、施工者と共創する流れに

◆BIM通じて照明の付加価値提案
 6300アイテムのBIMファミリデータを無償提供するコイズミ照明では、データ提供をきっかけとして、設計段階から建築プロジェクトに参画するケースが出てきた。橿棒直紀取締役首都圏市場開発統括部長は「BIMを足がかりに、設計者や施工者と共創する流れが広がってきた」と力を込める。照明メーカーの中でいち早くBIM対応を進めてきた同社は、新たなステージへと力強い一歩を踏み出そうとしている。

一歩踏み込んだ提案活動が実現

 経営方針として『ファーストコールカンパニー』を掲げる同社が、オートデスクのBIMソフト『Revit』向けに主力製品のBIMファミリデータ提供を始めたのは2年前のことだ。設計者や施工者などプロジェクト関係者と価値を共有するコトづくりの一環として、BIMと真正面から向き合ってきた。
 これまでの提案活動は照明設計部門のLCR(ライティング・クリエイティブ・ルーム)が主に担ってきた。ことし4月からはBIMや制御の視点を軸にコトづくり提案を担う開発推進部を発足し、データ提供から付加価値提案へとつなげる社内体制の拡充を図った。石田秀樹開発推進部長は「BIMデータをわれわれの提案として効果的に活用する流れを作っていきたい」とこれからについて語る。
 プロジェクト関係者とBIMを通じて価値共有を進めるきっかけづくりとして、同社は設計事務所、建設会社、内装企業などBIMを積極的に導入する企業との勉強会にも取り組み始めた。生産性向上を出発点に経営方針でBIM導入を掲げる企業は増えつつあり、既に20社ほどの企業と勉強会を通じてつながりを持ち、設計段階に照明BIMの視点から具体的に何ができるかを説明しているという。
 無償提供する製品のBIMファミリデータはRevitに対応していることから、設計者や施工者と密接に情報共有する手段として、オートデスクのクラウドシステム『BIMcollaborate Pro』も本格導入した。既にトライアルプロジェクトも進行中という。石田氏は「リアルタイムに情報共有を進めながら、BIMの効果的な使い方を関係者間で共有できている」と手応えを口にする。

プロジェクトではリアルタイムに情報を共有

 首都圏で今夏に竣工予定のあるオフィスプロジェクトでは組織設計事務所と連携し、BIMデータの提供をきっかけに照明設計を手がけることになった。担当したLCR東京の能海尚也氏は「設計者からBIMデータを提供され、われわれ自身がBIMで照明設計に取り組んだ初のケース」と明かす。竣工後には設計時にシミュレーションした照明計画と実際の状況を比較検証する試みも行い、BIM提案の精度をさらに高める計画だ。
 照明メーカーである同社にとって、BIMは言語化が難しい照明計画を有効的に可視化する手段になっている。建築主を含むプロジェクト関係者にとっても、より早い段階から対象空間が照明によってどう演出されるかを把握・情報共有できる。石田氏は「照明BIMの有効性は認識されつつあり、われわれが設計初期段階から照明のノウハウを提供する流れは、今後さらに拡大していくだろう」と考えている。
 あるゼネコンからは大型商業施設のプロジェクトで、自然光と人工光それぞれの空間の見え方をBIMで示してほしいと依頼された。このプロジェクトではBIMによりレンダリングデータの提供も後押しとなり、最終的に照明機器の指名・納入につながった。橿棒氏は「まさにファーストコールカンパニーを実現した事例の1つ」と明かす。
 企業活動でSDGsの取り組みが広がる中、照明と他設備との関係性もより密接に求められるようになっている。照明機器は光環境だけではなく、ブラインドなどの他設備と連携して制御することで、より快適で環境負荷が少ない空間を演出するため、その最適解を示す手段としてもBIMの活用が重要になる。まさにBIMと照明制御は「車の両輪」であり、開発推進部にそれぞれのチームを置くのもそうした狙いからだ。
 同社は、BIMデータの提供数を2022年度中に2000アイテム追加し、トータルで8000アイテムまで拡充する計画だ。同社の非住宅系アイテムの半数以上でBIMデータ化が整うことになる。橿棒氏は「データ提供はあくまでもきっかけであり、BIMを通じて照明の付加価値を提案していくことがわれわれの使命だ。BIMによって一歩先に踏み込む提案活動の流れはさらに広がっていくだろう」と先を見据えている。

左から石田氏、橿棒氏、能海氏



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