【照明専業メーカー初】建設業の生産性向上に貢献へ コイズミ照明がBIMデータを無償提供 | 建設通信新聞Digital

5月8日 水曜日

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【照明専業メーカー初】建設業の生産性向上に貢献へ コイズミ照明がBIMデータを無償提供

 コイズミ照明が、主力製品を対象にBIMデータの無償提供に踏み切った。照明専業メーカーでは初の試み。橿棒直紀取締役首都圏市場開発統括部長は「設計者や施工者の生産性向上に少しでも貢献したい」と力を込める。国内で建築プロジェクトへのBIM導入が着実に進む中、先行してBIMデータを提供することで「より早い段階から照度検証など空間的なシミュレーションへの道筋をつくり、空間価値の向上につなげる」狙いもある。

橿棒統括部長


 設計から施工に至るまで幅広く使われるBIMデータのうち、要望も多かったオートデスクのBIMソフト『Revit(レビット)』への対応を決めた。ソリッドシリーズやベースライトダウンライトなど720機種をBIMデータ化し、3月16日からHP(ホームページ)で提供を始めた(https://www.mediapress-net.com/search/KZMBIM/index.html)。シリーズごとに一括ダウンロードも可能だ。

 橿棒氏は「製品数は2万点を超えるだけに、まだごく一部に過ぎない。今後は独自性製品や新製品を中心に提供を増やすが、まずはお客様(設計者や施工者)に対して、使い勝手を検証することに重点を置きたい」と話す。アイテム数が多いという照明業界の特性と、ユーザビリティーを考慮しながら、2021年度をめどに数千アイテムまで増やす計画だ。

3Dモデル


 BIMデータ提供の検討を始めたのは約2年前。プロジェクトチームを立ち上げ、必要性を探ってきた。データ構築の面でも時間をかけてきた。そもそも照明器具の製造工程では3次元設計を取り入れているが、そのままデータを転用できないため、建築向けにデータを1から作り直す必要があった。

 提供するデータには、パラメーター情報としてマテリアルデータ、ランプ、消費電力、電流・電圧、器具寸法・可動角度、照明配光IESデータなどを盛り込んでおり、モデリング情報の数値入力によって照射角度を変えることができ、空間にリアルな光を再現できる。光色変化による空間イメージに加え、床や壁などの内装仕上げに応じて光色の細かな変化も確認可能だ。

レンダリングのイメージ


 同社は照明設計部門のLCR(ライティング・クリエイティブ・ルーム)を組織し、基本構想から確度の高い光環境をデザインしており、今回のデータ提供に合わせ、BIMデータを使用した照明設計などの支援体制も強化する。既に具体の建築プロジェクトでBIMデータ活用の事例も出ており、好スタートを切った。

 そもそもBIMデータ提供に踏み切った背景には「建設産業界の生産性向上に貢献していきたい」との思いがあった。建設業は製造業に比べデジタル化が進んでおらず、人手不足なども深刻化している。梅田照幸社長も重点戦略としてBIM対応の必要性を訴えており、設計から施工まで幅広く提案する照明専業メーカーとして、社を挙げて設計者や施工者の業務効率化を後押しする。

 BIMの導入により、設計段階ではより早い時期から、室内空間の仕様やビジュアルが固まる。それに連動して具体の照明器具を選択し、最適な位置への配置を検討できるようになる。設計内容や完成イメージが初期段階から視覚的に分かりやすく3次元で示されることから、照明器具のBIMデータ提供ニーズは高まっていた。

 現在、Revit向けデータに限定しているが、他のソフトへの対応を求める声もあり、状況を見ながら対応ソフトの数を増やすことも検討していく。住宅分野についても3次元設計の流れが拡大しており、データ提供についてもニーズを反映させていきたいとしている。

 橿棒氏は「BIM導入の流れが拡大する中で、社内体制を整え、設計者や施工者からの要望にしっかりと応えていきたい」と強調。今後は各拠点へBIMに詳しい担当者を配置するなど、社を挙げてBIM対応を加速させる。「ドラフターからCAD、CADからBIMへと時代は変化している。新しいことに挑戦し続けることがわれわれ自身の成長につながる」と期待する。

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