【BIM2024⑪】コイズミ照明 照明のフロントローディング実現 | 建設通信新聞Digital

5月1日 木曜日

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【BIM2024⑪】コイズミ照明 照明のフロントローディング実現

計画と完成空間に相違はなし

左から橿棒氏、西村氏、能海氏


 「BIMの価値共有が何よりも大切」と語るのは、コイズミ照明の橿棒直紀取締役首都圏市場開発統括部長だ。照明メーカーの中でもいち早くBIM対応に乗り出した同社は2年ほど前から内装工事業各社との「BIMによる共創」が広がり始めた。現在、BIMをきっかけに製品採用につながった受注の半数が内装工事業とのプロジェクトとなる。「BIMの価値共有が実現し、それが成果につながっている」と強調する。

 その背景には、大手各社が一斉にBIM導入にかじを切ったことが関係している。内装工事会社ではBIMの設計データを施工にも活用する改革に乗り出し、BIMを軸に生産プロセスが動き出している。各社が同社と同じBIMソフト『Revit』を選択していることも、その後押しになっている。

 内装の設計は、建築の設計が完了したタイミングで始まる。同時に照明計画も動き出すことから、照明機器メーカーは配灯図、照明分布図を作成した上で器具リストを示す。同社LCR東京第一設計室の能海尚也氏は「従来CADソフトでの順を追って進むプロセスと異なり、BIM提案では同時並行でわれわれの設計作業が進んでいる」と説明する。

 内装工事会社にとっては、設計の早い段階から照明の演出で空間がどう変化するかを把握できるようになり、設計変更などの手戻りが削減できるほか、施主側に対しても情報精度が高い空間イメージをより早く示せることから合意形成の側面でも効果がある。同社が機器設置後の照明空間とBIM提案時によるレンダリングの比較検証に力を注ぎ、より実空間に近いBIM表現を実現したことも原動力になっている。

BIM(上)と現実の比較、精度高い空間イメージ提供


 橿棒氏は「実際の空間把握が早まることで、照明のフロントローディングが実現している」と強調する。BIM対応から製品受注につながったプロジェクトは既に10案件強が竣工し、現在進行中の案件も10件近くに達する。「BIMによる価値共有が着実に成果に結びついている」と力を込める。

 BIMをきっかけに内装工事、組織設計事務所、大手ゼネコン各社との関係性もより親密になり始めた。同社は4年前に提供を始めた製品のBIMデータ化に並行し、設計部門のBIM対応も拡充してきた。首都圏市場開発統括部店舗開発部第二開発室の西村祐貴室長は「社を挙げてBIMに力を注いできた当社のことに注目し、仕事につながるケースも増えている。具体の意見交換を求められたケースもあり、顧客との結びつきがより強まっている」と明かす。

 特にBIMへの取り組みが早い大手顧客とは、BIMを軸に設計担当同士の情報交換が始まっている。光が当たった時の影や空間の揺らぎまで詳細に確認し、BIMレンダリングによって製品ごとに空間イメージがどう変化するかまで徹底して検証したケースもあるという。

BIM軸に顧客との情報交換スタート


 同社が昨年秋に開催した新製品展示会では約1000人の参加者が訪れた。注目された一つがBIMレンダリングと実空間の比較による体感展示だ。照明機器を変えることで、実際の空間とBIMイメージを比較検証するものだ。能海氏は「BIMと現実の相違がほとんどないことを広く知ってもらうきっかけになった」と手応えを口にする。

 従来の照明計画では、これまで空間パースを描き、光のイメージを施主に伝えていたことから、機器設置後に以前のパースとのズレが生じ、調整を余儀なくされるケースもあった。橿棒氏は「設計の段階から空間イメージを共有しながら作業を進められることが強みになり、これまで得ていた完成時の感動がBIMによって薄れている。これこそ計画と完成時のイメージの相違がなくなったBIMならではの成果だ」と強調する。

 製品のBIMデータ化も新たなステージに入る。これまでは主力の6000製品に限定していたが、7月からは非住宅向けの全てとなる2万製品に拡大する。これまで外注してきたBIMデータ化を完全内製化し、新製品のリリースに合わせてデータ提供する流れにシフトする。

 同社は製品づくりも3次元設計に切り替えており、将来的には製品データからBIMデータを出力する流れも視野に生産改革が進行中だ。橿棒氏は「照明メーカーとしてのDXも社内で進行しており、BIMの流れと連動することでより競争力を発揮させたい」と考えている。



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