【深化する関西の建設ICT⑥】鉄建建設 支店・現場主導でBIMに広がり | 建設通信新聞Digital

5月2日 木曜日

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【深化する関西の建設ICT⑥】鉄建建設 支店・現場主導でBIMに広がり

 鉄建建設が、支店や現場の主導でBIM導入を拡大している。現在は稼働中現場の2、3割で活用が進む。松本賢二郎BIM推進グループ長は「生産性向上を目的に、BIM導入の機運は確実に高まっている」と強調する。全国からの依頼を受け、同グループがBIMモデルを提供する中で、最近は受注に向けた生産計画段階での活用も増えている。関西地区の導入事例では積算数量の把握事例もあり、BIMが生産性向上のツールとして機能している。

 本社建築本部に同グループが設置されたのは2017年。以前から試行的にBIM導入を進めてきたが、生産性向上の一環として同グループが全国からの依頼を受けてBIMモデルを提供する体制を整えた。初年度こそモデル現場を位置付けたものの、次年度からは支店や現場が自発的に導入する流れに切り替わった。各支店に配置するBIM担当者も導入の下支え役になっている。

坂下さん、松本グループ長、スさん

 専任3人でスタートした同グループだが、導入機運の高まりを背景に、20年度からは7人体制に拡充した。所属する坂下芽衣さんが「現場の要望を反映したモデルづくりを重視している」というように、現在のBIMモデル作成はグループ内で一手に引き受ける。BIM操作スキルを評価され、グループに配属されたス・レイ・ナインさんは「現場知識を少しでも早く習得して貢献したい」と語る。松本氏は「これまで導入件数を伸ばすことに注力してきたが、これからはより質の高いBIMモデルの提供を目指す」と力を込める。

 特にこだわるのは、生産性向上に貢献するBIMモデルの提供だ。当初はBIM導入がしやすい中小規模のプロジェクトが多かったが、最近は大規模案件や複雑なプロジェクトでの導入依頼が増加している。支店からはBIMを使って積算数量を把握したいとの依頼も強まっており、社内の標準BIMソフトに位置付ける『Revit』とのデータ連携効果の高いカルテック(大阪市)の鉄骨積算システム『すけるTON for Revit』が効果を発揮している。「われわれ(同グループ)にとっての有効なモデリングツールの1つ」と、松本氏は明かす。

『すけるTON for Revit』で積算数量も把握したホテルプロジェクトのモデル

『すけるTON for Revit』の導入は18年にさかのぼる。積算ツールでありながら、鉄骨構造の複雑な部分まで細かく表現でき、納まり検討にも効果を発揮することから活用を決めた。東北地区のホテル工事に導入したのを足がかりに、これまでS造を中心に計12件のBIMプロジェクトで活用した。「Revitでは描けない細かな部分まで描けることが利点」とは坂下さん。実現場での導入を繰り返す中で、積算精度も確認済みだ。

 関西地区で施工中のホテルプロジェクトではBIMで積算数量の把握がしたいとの要望があり、計画当初からモデリングで『すけるTON for Revit』を使い、仮設計画の参考数量も導き出した。建物が15mほど前面に突き出したデザインが象徴的な19年9月竣工の「京都大学桂図書館」では鉄骨と鉄筋が入り組んだパネルゾーンの構造検証に加え、傾斜地の半地下構造であったことから基礎部における掘削面の事前イメージも細かく把握した。施主や設計者との合意形成にも構造の納まりモデルが効果を発揮した。

19年9月竣工「京都大学桂図書館」の外観パース

 同グループには20年度に入り、支店や現場から既に10件を超えるBIM対応の依頼がある。同時期に複数の依頼が舞い込むことも少なくない。「BIMに対する前向きな意識が高まっているのは、生産性向上の意識が定着していることに他ならない」と松本氏と手応えを口にする。BIM普及を足がかりに、同社の生産性向上への取り組みはさらに“深化”を見せようとしている。

 

 

 

 

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