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9月12日 金曜日

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【記者座談会】石破首相が辞任表明/三菱商事が洋上風力発電から撤退

◇国土強靱化に積極的な総裁誕生に期待

石破首相の辞任に伴い10月4日に自民党総裁選の投票が実施される


A 石破茂首相が辞任を表明した。

B 参院選の敗北を受けて自身の進退を「やるべきことを成した後にしかるべきタイミングで決断する」と繰り返していたから、辞任は予想できたけど、自民党総裁選を前倒しで実施するかどうかの意思確認手続きを行う日の前日に表明したのは驚きだった。

C 辞任に伴う総裁選の投票日が10月4日に決まり、9月22日の告示を前に号砲が事実上鳴った。出馬表明が今後本格化する。

C 誰が総裁になっても、衆参両院で少数与党の状況に変わりはなく、野党の協力を取り付けられなければ国会運営はすぐに行き詰まる。連立の枠組み変更もあるかもね。

A 自民党中心の政権が続くと仮定して、気になるのは政策だ。石破首相は、関税措置、防災庁、賃上げ、農政改革の四つを挙げて「次の政権に何としても引き継いでいただかねばならない」と強調した。

C 2026年度の設置を予定していた防災庁はどうなるかな。災害が激甚化・頻発化する中、政府の災害対応を強化する方向性に異論を唱える人はいない。だが、新たな庁を設けるべきかは意見が分かれるところで、24年総裁選では複数の立候補者が否定的だった。

C 石破首相の肝いりだっただけに、辞任表明で不透明感が漂い始めた。霞が関でもそう受け止めている人がいる。

B 政策の継続という面では、国土強靱化は期待できそうだ。前回の総裁選では多くの立候補者が推進する姿勢を示していた。

C ただ、思いに濃淡はあるだろう。5年間の事業規模を「おおむね20兆円強」とする第1次国土強靱化実施中期計画が26年度に始まる。大事なのは“強”の予算確保で、その部分に積極的な新総裁の誕生に期待したいね。

◇再エネ促進の目標達成へ確実な歩みを

A 話は変わるけど、三菱商事が8月27日、子会社を代表企業とするコンソーシアムが秋田県沖と千葉県沖の3海域で手掛けている着床式洋上風力発電所の開発撤退を発表した。決断に至った背景に何があったか。

B 中西勝也社長は、サプライチェーンの逼迫(ひっぱく)を挙げた。欧州勢の風車メーカーはコロナ禍やロシアのウクライナ侵攻の影響を受け価格を引き上げたことで建設費の高騰につながり、事業の採算性がつかなくなったという。

A 今後の洋上風力発電の関連施策への影響は。
E 実は、撤退を発表した約3週間前に、経済産業省と国土交通省が第2次洋上風力産業ビジョンをまとめている。もちろん両省は事業環境の厳しさを認識している。産業界は、着床式の発電コストを35年度までに1kW時当たり8-9円とする目標を設けているが、世界的なインフレによる費用増大などを踏まえ、ビジョンでは早急に見直す方針を示した。

C サプライチェーン構築については、欧米風車メーカーの国内製造拠点化などの複数のアプローチを想定しながら風車の国産化に取り組む。北海道や九州では風力産業と地元企業とのマッチングも進める考えだ。

C 浮体式の導入では40年までに発電容量15ギガワット以上を確保する目標を掲げた。じっくりと中長期的に取り組まなければならない課題だ。両省とも新しいビジョンを基に、一つひとつ確実に事業を進めていく構えだ。
E 政府のエネルギー基本計画は、40年度までに再エネが電源構成に占める割合を4-5割程度まで引き上げる方針とした。洋上風力発電が再エネ促進の重要施策であることは今も変わらない。目標達成に向けて歩みを止めてはならない。

 

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