【記者座談会】東日本大震災から13年/岸田首相と4団体首脳が意見交換 | 建設通信新聞Digital

5月10日 金曜日

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【記者座談会】東日本大震災から13年/岸田首相と4団体首脳が意見交換

◇今後の災害に道路啓開など知見を生かす

A 3月11日、未曾有の災害となった東日本大震災の発災から13年を迎えた。

B 巨大地震や津波で被災した地域の復興は着実に進む一方、福島県大熊町、双葉町、浪江町、富岡町の「特定帰還居住区域」での除染やインフラ整備など、住民の帰還準備に向けた作業は今後本格化する。

C 除染事業などを所管する伊藤信太郎環境相は8日の閣議後会見で、これまでの建設企業の尽力に謝意を示した上で、「引き続き安全第一の下、復興・再生の取り組みに協力してほしい」と述べている。

D 福島県浪江町に計画する福島国際研究教育機構(F-REI)の本施設も、2024年度から設計に着手する。用地取得も進めていく予定だね。

B 土屋品子復興相は、日刊建設通信新聞社などの共同インタビューで「建設工事などの各工程を着実に進め、復興庁設置期間内の施設の順次供用開始を目指したい」と意気込みを語っている。

A 現在も建設業は復興に向けて欠かせない存在だけど、東日本大震災の発災直後、被災地に入る道路を切り開く重要な役割も担ったよね。

C 東北沿岸部を大津波が襲い甚大な被害が発生したため、内陸部に縦軸の道路を確保した上で、沿岸部までを横につなぐ「くしの歯作戦」と呼ばれる道路啓開を行い、早期に被災地へ入ることができた。

D 元日に発生した能登半島地震でも沿岸部へのルートを切り開くため、くしの歯状の道路啓開作業を展開した。東日本大震災の経験を生かした取り組みと言えるね。

B 最近は千葉県で震度4クラスの地震が頻発し、首都直下地震など大規模地震の発生も懸念されている。東日本大震災で得た知見を今後の災害対応にも大いに生かしたい。

◇賃上げ×働き方改革の難題克服へ

8日に初めて首相官邸で開催された政府と建設業4団体との意見交換会


A 首相官邸で先週行われた岸田文雄首相や関係閣僚と日本建設業連合会、全国建設業協会、全国中小建設業協会、建設産業専門団体連合会の建設業4団体との意見交換会は、テレビや一般紙などのさまざまなメディアでも報じられ、注目を集めたね。

B 慣例では新たな公共工事設計労務単価の決定後に、国土交通大臣と4団体首脳が会談し、賃上げ目標などを申し合わせてきた。その場が今回は官邸にグレードアップした形で、経済財政政策担当大臣や防災・国土強靱化担当大臣、厚生労働副大臣、公正取引委員会委員長らも同席した。

C 公共事業は賃上げの好循環を官主導で行える市場の一つ。12年連続で設計労務単価を上昇させてきた国交省や建設業界の実績が、経済を一丁目一番地とし、構造的な賃上げを推進する官邸サイドの目にとまったのだろう。

D 一方、建設業界は公共分野より民間分野が大きなウエートを占めているのも事実。この点は意見交換会の場で、日建連や全建の会長が、民間発注者に対する適切な価格転嫁の働き掛けなどを求めていたことからも、その重要性と難しさがうかがえる。官民を問わず業界全体の底上げを図らなければならない。

B 気を付けなければならないのは、設計労務単価が12年連続で上昇したといっても、建設労働者の賃金はまだまだ、全産業平均に比べて低いという点だ。他産業でも積極的な賃上げが行われ、さらに建設現場の過酷さを勘案すると、もっともっと処遇を上げなければ担い手は確保できない。意見交換会では、労働時間規制を踏まえた働き方改革への万全の対応も誓った。さまざまなコストアップ要因がつきまとう中で、いかに賃上げも実現するのか。業界は難題に直面している。

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