【記者座談会】大阪北部地震 教訓生かし迅速に初動対応/中野サンプラザ再整備見直しどうなる | 建設通信新聞Digital

5月4日 土曜日

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【記者座談会】大阪北部地震 教訓生かし迅速に初動対応/中野サンプラザ再整備見直しどうなる

A 震度6弱を記録した大阪北部地震から2週間になろうとしている。住宅被害は1万棟を超えたが、その99%が一部損壊にとどまった。いつでも動けるように準備していた地元の建設業界だが、危惧(きぐ)されていた大規模な余震もなく、現在は一安心という落ち着いた状況だ。
B 振り返れば発災時の建設業各社の対応は迅速だった。阪神・淡路大震災や東日本大震災の経験と、地道に続けてきた震災訓練の成果もあり、ゼネコンなどの民間企業は社員の安否確認に並行して、現場や顧客への被害把握も迅速に行った。そうした初動対応のスピード感で被害を迅速に把握できたことによって、ゼネコンなどは対策本部の主体を関西支店に置く最適な陣形を早急に整えることができた。
C 帰宅困難者の対応に宿泊スペースを確保した企業もあったが、結局は誰一人として使われなかったという社も数多くあった。使われなかったことは幸いであり、これまでの教訓を生かした欠かせない対応だったと思う。
D 通勤時の地震という観点では、交通が麻痺し、大混乱になったことは今後の大都市部における地震対応の教訓の1つとして課題になるだろう。企業にとってはBCP(事業継続計画)の観点から徒歩で通勤できる社員の確保が必要になってくる。
A 尊い命を奪ったブロック塀への早急な対応も必要だ。建築基準法で技術基準が示されているが、その健全性を十分に把握できていない実態も浮き彫りになり、点検だけでなく、危険個所への対策も急がれる。
C 今回の地震で銭湯の煙突が倒壊した。こうした特殊な構造物にも目を向けるべきだろう。東日本大震災では、東京タワーの上部が曲がったことに驚いた人も多かった。

酒井直人新区長はこれまでの検討過程に疑問

A 話は変わるけど、東京都内では6月の区長選で中野区長が変わった。酒井直人新区長は、前区長が進めてきた中野サンプラザの再整備構想を見直す姿勢を示している。大型プロジェクトの見直しは、選挙戦で対立軸として据えられるケースも多い。
E 初登庁した酒井区長は会見で、「(現時点のサンプラザ再整備は)残す、残さないの議論がされていない」と、これまでの検討過程に疑問を呈した。残す場合、建て替える場合のコストを区民・議会に示し、住民も巻き込んで再検討したいということだ。

酒井区長は現時点のサンプラザ再整備構想について、 これまでの検討過程に疑問を呈した 


F 一方で、事業費約221億円を見込む庁舎建て替え事業については「建て替える方向で、議決も得ている」とし、見直しはしない考えを示した。しかし、サンプラザ再整備の賃料収入を、庁舎の建て替えに充てる当初の計画はどうなるのだろう。
E その点について区長は、「(財源の)具体イメージができているわけではないが、区役所建て替えの経費はできるだけ抑えられるよう努力する。ただし、建て替え費用の確保を目的として(サンプラザ再整備の)建物スキームを考えるということではない」と述べている。
F ことし秋にも検証委員会を立ち上げる方針で、区長は「将来の区の負担がどうなるか、が大きな焦点だと思う。そこも検証委員会でデータを出して議論していただければ」と期待している。
E 長年の方針を大きく変えるだけに、結論を出す時期については不確定のようだ。しかし、区が2014年に策定した「区役所・サンプラザ地区再整備基本構想」もセットで再考することになり、会見では「(今年度中に)方向性を示すのは厳しいかもしれない」と本音を漏らした。
A 方向性、その後の結論が出るまでには一定の時間がかかりそうだが、議論の過程も見逃せないね。

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