【記者座談会】台風21号、北海道胆振東部地震 災害列島に防災インフラの着実な整備を | 建設通信新聞Digital

4月29日 月曜日

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【記者座談会】台風21号、北海道胆振東部地震 災害列島に防災インフラの着実な整備を

A 9月に入ってから立て続けに台風21号、北海道胆振東部地震が発生し、各地に大きな爪痕を残した。日本が災害列島であることを改めて思い知らされた。
B 非常に強い勢力を保ったまま列島を縦断した台風21号では、100カ所の観測所で最大瞬間風速の記録が塗り替えられた。テレビ画面からは、普段は飛ぶはずのないさまざまなものが容易に宙に舞う映像が流れ、自然の猛威を痛感させられた。高潮被害によって冠水した関西国際空港の滑走路や、強風に流されたタンカーが衝突した関西空港の連絡橋など、主要インフラも大きなダメージを負った。
C あるゼネコン幹部によると、マンションのベランダで隣の部屋との境界になっている避難用の仕切り板が強風で破損するケースが相当数あったらしい。管理組合からどうすれば入手できるかという問い合わせが施工者にも来ているという。合同庁舎など拠点建築物の窓ガラス破損もあった。ハード面の強化も含め、行政のBCP(事業継続計画)対応の課題になりそうだ。
D 地域の守り手でもある地域建設企業は、災害協定に基づく迅速な動きを見せた。全国建設業協会のまとめによると、4日時点で四国や近畿地方は地方自治体の要請を受け、各府県の建設業協会が暴風による倒木の撤去作業などに当たった。
A 4、5日にかけて近畿地方などに大きな被害をもたらした台風21号への対応が続く中、6日には北海道胆振東部地震が発生した。発生時も含めた現地の状況はどうだったのかな。
E 真っ暗な中、地鳴りとともに激しい縦揺れが続き、携帯電話の緊急地震速報が鳴り響いた。地震は道東で何度か経験していたが、まさか大都市札幌で経験するとは思ってもみなかった。地震直後に、道内全域が大規模停電になった。幸い家の各部屋には懐中電灯があったため、家族が電灯片手に居間に身を寄せた。40時間を超える停電が続き、札幌市中央区にある支局の事務所ビルも停電中は立ち入りを規制され、解除後に事務所に入ってみると、机周りの書類が散乱し、壁にはひびが入っていた。

北海道胆振東部地震では液状化により家は傾き、車は土砂に埋まった (札幌市清田区、6日午前に撮影)


A 地元建設業の対応状況は。
E 停電のためなのか、携帯電話の中継基地が機能せず、電話もつながりにくかった。ようやく連絡が取れた地場ゼネコンの広報担当は、「まず、社員の安否確認が最優先だった」と話してくれた。社員とはラインなどで連絡を取り合ったという。停電により札幌市内は信号が機能せず、車の移動もままならない状況だったが、事故の報道はほぼなく、市民の高いモラルを再認識できた。
A 土砂崩れのほか、電力需給のバランス崩壊によるブラックアウトなど、複合的な被害が発生したそうだね。
E 都市の大規模停電は想定外のことばかりだった。携帯電話を充電するために公共機関などで充電場所を開放する措置もあったが、長蛇の列ができていた。断水に伴って水を買い求める人の列も目についた。水と電気がなければ命に関わる。まだ暖かい時期での地震だったが、真冬に大規模停電があったらと思うと身のすくむ思いだ。
A 2018年7月豪雨、台風21号、北海道胆振東部地震と相次ぐ自然災害による被害を最小限にとどめるためにも、防災インフラの着実な整備が求められる。一方で、住民自らも危険に対する感受性を高める必要がある。頻発化する自然災害は、いつどこで起きるかわからない。複合化する被害に備えるためにも「自分だけは大丈夫」という考えは捨てるべきだ。

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