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5月18日 土曜日

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【太宰府天満宮末社に初適用】江戸時代の和鉄を再現/竹中工務店と日鉄テクノロジー

「REI-和-TETSU」を適用した本殿と、適用部分の拡大(右)


 竹中工務店と日鉄テクノロジーは、江戸時代末期まで国内の木造建築に使われていた和鉄の特性を、現代の製鋼技術で再現した鋼材「REI-和-TETSU(れいわてつ)」を共同で開発した。砂鉄と木炭を原料に、たたら製鉄法で得た銑(ずく)・鋼・鉄である和鉄の特性を最新の科学技術で分析・評価し、成分組成を忠実に再現した鋼材となる。現代の鋼材に比べて鉄の純度が高いだけでなく、耐食性と柔軟性に優れている。

 文化財建造物の保存修理工事や伝統木造建築の復元工事では、可能な限り当時の技術や材料を活用することが望ましいとされている。一方、現在は建築用途の和鉄が入手困難で、現代鋼での代替も不可能とされていた。コストやサプライチェーンの観点から、一般構造用圧延鋼材や番線といった鉄線などが使われてきた。

 同鋼材の企画、開発、活用検討は、2020年1月から22年12月にかけて実施した。製造年代を特定できる和鉄で作った和くぎを全国各地の国指定重要文化財から集め、原料や製造方法の視点で成分組成を評価分析した。その結果、使用年数が経過するにつれて和くぎの表面を覆うさびが強固な酸化皮膜を形成し、内部の鉄を保護してさびの進行を抑えていたことが分かった。

 れいわてつは、重要文化財「太宰府天満宮末社志賀社本殿」の保存修理工事に初適用された。安定供給できる鋼材として、文化財建造物の保存修理工事のほか、耐久性の向上が図れることから使用期間が長い伝統木造建築の復元工事での活用を進める。長期耐用性を持つサスティナブルな素材としてもアピールし、近現代建築や建築物の内装材などへの適用を視野に入れる。

 今後、耐食性の定量的な分析を進めるなど、評価分析技術を通じて鉄の多様な魅力を発信し、国内外に展開する。

 れいわてつの開発は、日本の伝統の技を科学的に評価することで次世代に技をつなげるだけでなく、新たなイノベーションの創出に役立つという。日本の伝統技能・技術が注目される機会を作り、商業建築といったさまざまな分野に適用範囲を広めたい考え。

 

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