【富田興業】「TETSU-1 GRAND PRIX」大会2連覇達成 技能を維持し高めていく秘密とは? | 建設通信新聞Digital

4月29日 月曜日

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【富田興業】「TETSU-1 GRAND PRIX」大会2連覇達成 技能を維持し高めていく秘密とは?

 2019年11月の第3回全国鉄筋技能大会「TETSU-1 GRAND PRIX」で富田興業(兵庫県西宮市)の和田浩茂氏が優勝した。17年の第2回大会も同社からの出場選手が優勝しており、会社として全国2連覇の偉業を成し遂げたことになる。富田勇社長は「出場するからには勝つのが理想だが、それが第一の目的ではない。若い職人が明確な目標を持って技を磨き、まわりがサポートする仕組みや雰囲気ができることが何よりも大きい」とその意義を説く。

富田勇社長

 同社は60社の協力会社を抱え、西宮市の本社のほか、加東市と三木市に工場を構える有力な専門工事業者だ。時代の流れとともに請負業者も技術より利益を追求するような風潮になってきているが、同社は『信頼と技術で躍進』をモットーとしており、富田社長は鉄筋工の技術・技能をどう維持し、高めていけるかを日々考えていた。

 そして、「技能向上の意識をより高めるには、腕を競わせるのが良いのでは」と思いつき、協力会社のみを対象とする鉄筋工の社内競技大会を開催した。人前で競技する恥ずかしさや競技に向けた練習などの負担から出場選手は10人程度と思ったより少なかったが、「社内大会であっても負けたくないという気持ちから真剣に課題に向き合ってくれていた。また、職人は自分の技術の殻にこもりがちだが、こういう場で互いの交流も生まれる」(富田社長)と実感。その後も継続的に社内大会を開くつもりでいたが、全国鉄筋工事業協会が『TETSU-1 GRAND PRIX』を開催することになり、以降は社内大会がTETSU-1地区予選(関西代表選考会)への出場選手を決める場となっている。

 競技は技能検定鉄筋組立1級問題にはら筋1段を追加したもの。和田さんは、普段の仕事ぶりを高く評価していた富田社長から出場を打診され、春から練習などの準備を開始。仕事をしながら平日の夜や、ときには休日も練習をこなす生活は大変で「一度だけやめたいと思ったこともある」と打ち明ける。
 しかし、この地道な 努力の積み重ねが、和田さんの実力を高めるとともに、自信も与えてくれた。

優勝した和田浩茂氏


 6月の社内大会、9月の地区予選を勝ち抜き、11月の全国大会でも「競技スタートの瞬間こそ緊張したが、あとは普段通りにやれたと思う。競技中からいけるだろうと思っていた」という余裕にもつながった。
 「自分たちで効果的な練習内容や協力体制などを考えてもらいたかった」(富田社長)ため、口は出さないようにしていたが、練習の時には東条工場(加東市)を開放し、準備や片付けを手伝うスタッフも用意するなど全面的にバックアップした。

 「素晴らしい環境で練習をさせてもらい、会社のサポートは本当にありがたかった」という和田選手は、その感謝の気持ちが強かっただけに「優勝が決まった瞬間は、支えてくれた人のことを思ってうれしいというよりもホッとした」と振り返る。

 学校の先輩に憧れて17歳でこの世界に飛び込んだ。34歳となり、人生の半分を鉄筋工として過ごしてきたが、いまだに向上心は失っていない。「鉄筋は建物が完成すればコンクリートで見えなくなってしまうが、それでも建物を見れば誇らしく思える」と仕事の魅力を説き、「将来は親方となって活躍していきたい」と夢を語る。

 富田興業の選手は「TETSU-1」が開かれた3回いずれも関西代表となっており、全国大会での成績も3位、優勝、優勝と目覚ましい成績をおさめている。しかし、あくまでこの大会を技能者育成の場と位置付けているため、毎回違う選手を出場させる。和田さんも次回大会ではサポートに回ることになるが、「職人は自分の技術を見てもらいたいし、自分の実力を知りたいもの。後輩にはこの場をぜひ経験してもらいたいし、結果も残して欲しい。しっかり指導や助言をしていく」と語っており、大会を通じた技能の向上・継承はこれからもしっかりと受け継がれていきそうだ。

「後輩にもぜひ経験してほしい」と語る和田氏(中央)

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